人生の真理や機微を述べて処世の戒めや教訓となるような言葉、格言。競輪にも先人たちが残してくれた格言がいくつか存在しています。
▶映像:連日、レースを生中継 ABEMAの競輪・オートレースチャンネル
前回は格言「先行一車は黙って買え」を紹介しました。今回はこの格言を紹介しましょう。
「二段駆けは頭鉄板」
通常、番組の編成をする場合、同地区の選手によって
<よくある並び>:(1)逃(2)追(3)追
というラインを組ませたいため、自力先行型の選手は1つの地区で1人だけにするものなのですが、決勝などでダブついてしまうとこのような並びになることがあります。
<稀にある並び>:(1)逃(2)逃(3)追
<よくある並び>の場合、番手にいる(2)の選手がとる戦術は「ゴール線手前まで(1)に引っ張ってもらって、貯めていた脚でゴール直前に追い込んで差し切る」というものになるでしょう。
一方で<稀にある並び>だった場合はどうでしょうか?
「ゴール線手前まで(1)に引っ張っていってもらいたいが、それより前で別線に捲られそうだ。ならば自分も自力の脚があるのだから、早めに(1)を捲ってしまおう」という戦術をとる可能性があります。そのように先行選手が逃げていった上を番手選手が駆けていくことを「二段駆け」と言います。(1)を切り離して(2)が出て行くということで「二段ロケット」などとも言われます。番手が捲るので「番手捲り」という戦術です。
なぜこれが(2)の頭で堅くなるのかというと、そもそも(2)は自力の脚があるのです。他の人を引っ張って、風を切って走るだけの脚がある。それなのに番手で引っ張ってもらえるため、脚を温存することをできる。そこから捲りを放てるのですから、とても強力なものとなります。散々、駆け引きをしてから捲りを打つよりも遥かに強くなるのです。
「いや、確かに(2)の頭は堅そうだけど、鉄板なのか……」という疑問があるでしょう。(1)と(2)の並び順は基本的に(1)が後輩で(2)が先輩、もしくは競走得点が(1)<(2)となります。そこで例えば(1)の選手が先行意欲がさほど高くなくて捲り型の選手だった場合、捲った上の二段駆けになるので捲りが不発なら番手から発進しても届かないことがあるんじゃないかと考えてしまう。
しかし、これは競輪です。ラインを組んだ選手たちは自分の勝利を目指しますが、その前にラインの勝利を目指して走ります。チームの勝利があった上での、自分の勝利。それが競輪です。
なので(1)の選手は<稀にある並び>になった時点で「逃げて(2)を勝たせる」戦術を取りつつ、「脚がもてば自分も勝つ」という走りになるはずです。そうなれば早め早めに先行して周回することになり、別線が捲りにくるタイミングに合わせて番手発進ができるので、(2)の頭がかなり堅くなります。
さらに(1)の選手が実力的に自分の勝利はないとわかるような番組だった場合、(2)を勝たせるために死ぬ気で踏んで逃げる、いわゆる「死に駆け」をすることになるでしょう。自分は勝てなくてもいいからとにかく前に出ていることを目標に走りますから、そこから番手発進する(2)の頭は鉄板となるのです。
ただ、そこまでやると勝つ気のない(1)の走りは八百長じゃないかという指摘がお客さんから起きかねません。そこで以下のルールが定められています。
「打鐘以前にスパートした選手が1着者より5秒以上離れてゴールした場合は失格」
過去には「6秒程度」という曖昧な規定だったのですが、2019年6月開催から改正されたルールにより「5秒以上」と明確に定められました。要するにゴールより遥か前にタレて圧倒的最下位になるのがわかっていながら番手捲りのために死ぬ気で走る「死に駆け」をできないようにしたわけです。
これによって「鉄板」の信頼度は多少落ちましたが、それでもやはり「鉄板」レベルであることには変わりありません。
(1)の「S」回数が2ケタに近く、決まり手が「逃」>「捲」のツッパリ先行型で(2)の決まり手が「逃」<「捲」の捲り型だったら「ド鉄板」。(2)のヒモは(3)で3着に(1)を抑えつつ、他のラインの先頭を走る選手を3着に入れて買えば、かなりの高確率で的中するはずです。このような番組があるかどうかを日々、チェックしてみましょう♪