夏フェスの季節を前にコロナで苦境に立つライブ・エンタメ、再開の見通しは? 海外では“ドライブイン”の試みも
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 多くの産業が新型コロナウイルスによって苦しむ中、開催中止を余儀なくされているのがライブ・エンタメ領域だ。アーティストと観客が一緒に盛り上がる、いわば“密”であることがその魅力。しかしこれが仇となり、5月までに中止となった公演は約15万3000本、ぴあ総研の調べでは業界の損失額は3000億円に達するともいわれている。

・【映像】「再開の順番は最後かも」夏フェス・音楽イベントの生き残る道は? 鹿野淳さんと考えるLIVEエンタメの苦境 

 そんなライブ・エンタメの花形が、夏に開催がピークを迎える音楽フェスだ。13日の『ABEMA Prime』では、音楽ジャーナリストでロックフェス「VIVA LA ROCK」プロデューサーの鹿野淳氏に話を聞いた。

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 まず、現下の状況について音楽を生業にしているアーティストたちはどのように考えているのだろうか。

 鹿野氏は「東日本震災の時、音楽は衣食住ではないが、困っている人たちに勇気と希望を与えたし、音楽の力でお金などの現実的な支援をすることもできた。しかし今回は、エンターテインメントには触ってはいけない、参加してはいけないという、体験したことのない非常事態だ。ポップミュージックが世界に大きな影響を与えるようになってから50年ちょっとくらいだが、ここまで音楽が矢面に立たされていることはないと思う」と話す。

 「もちろんツアーやライブ、フェスで忙しくて曲を作る時間がないといった状況ではなくなった分、気分を変えて曲を作っておこうと考えている人たちもたくさんいらっしゃる。しかしソングライティングをしている方々は非常に繊細に生きていて、悲観的な気持ちを火薬にして詰めることで素晴らしい楽曲を作っている方々なので、この状況はかなり堪えていると思う、また、ネットが普及して以降、米津玄師君を筆頭に、コンピューターミュージックの中からポップミュージックが生まれるという、いい流れも出てきたと思う。しかし今回のことで、音楽を目指す若者が減ってしまうかもしれない。そうなった場合に、3年後、4年後、5年後に影響が出てくることを危惧している」と、“音楽の不在”への危機感を吐露した。

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 日本のライブ市場は年々増加し、2018年には3448億円に達していた。鹿野氏がプロデューサーを務める『VIVA LA ROCK』も、毎年ゴールデンウィークに8万人規模で行われてきた。しかし今回は開催を見送り、夏の開催を模索中だ。

 「人間が内向化していけばいくほど、逆に体感すること、一体感が求められるようになると思う。LIVEエンターテイメントが盛り上がっていたのは、CDからネットの中で音楽を借りて聞くという定額配信制に移る中、現場で汗をかき、体を動かして、精神を開放していくという楽しさがあったからだ。緊急事態宣言の一部解除に伴って、14日以降、色々な面で自粛が解かれていくのかなと思う。しかし今回、ライブハウスがクラスターの発生場所になってしまったことも事実。だから音楽を含めたエンターテインメントは最後に再開の順番が回ってくるのではないかと思うし、それまでに再び感染が拡大する可能性もないわけではない。そうなれば、3密で危険だと言われるLIVEエンターテイメントが簡単に再開するとは言えない。しょうがないことだが、危険なものとして見られてしまったのは忸怩たる思いだ。開催できない時期が長期化していくのであれば、エンターテイメントの新しいあり方を本格的に実践していくという形になっていくのではないか」。

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 そんな中で注目されているのが、ドイツで登場した、社会的距離を取りつつ、車内でディスコを楽しむ「ドライブイン・ディスコ」だ。

 鹿野氏は「巨大なビジョンを見て、車の中で大音量の音楽が鳴っていれば、それなりの肉体的なエクスタシーがあると思う。勇気のある方はトイレのために降りて行くし、ペットボトルもある(笑)、車内で済ますことも可能なのではないか。このドライブイン・ディスコの流れはドイツだけに留まっていない。アメリカではドライブイン・シアターで最前列を取るために皆さん努力をしているらしいし、すでにドライブイン・フェスティバルの形で実施が決まった音楽イベントもある。日本でも活用される可能性が出始めていると思う」と話した。

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 ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「少しでもファンのいる方、才能のある方はネットの投げ銭も含めて色んな形でやっていける土壌はある。しかし、ライブをメイン収入でやってきた大手事務所は非常に厳しい。そういうところが新しい環境に慣れていく仕掛けをどういうふうに作っていくのかが問題だ。そういうところ助ける仕組みが圧倒的に足りてないのが音楽業界だ」と指摘、鹿野氏は「大手のプロダクション、“神話性”のあるアーティストには、言ってみれば“お布施”がある。そのようにファンクラブを存続できているプロダクションとアーティストは1対1の関係性で何とかサバイブできている段階だが、ライブでしかお金を回していくことができないチケット会社、コンサートプロモーター会社は非常に厳しい。言葉としてふさわしいかどうか分からないが、音楽業界を支援する公的基金というものも生まれてくる可能性が高いのではないか」とコメントした。

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 最後に鹿野氏は「音楽アーティストはライブハウスで2人、3人しか見ていないというところから始まっているので、成功すれば成功するほど、それを美談としてMCでも語る。コロナの時代が終わるか終わらないか分からないが、少なくとも3年後くらいには“あの時はこういう状態だったよな”という話を、ある意味美談、ストーリーとして話せる可能性があるので、夏過ぎにはライブを敢行していければ」と語っていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:「再開の順番は最後かも」夏フェス・音楽イベントの生き残る道は? 鹿野淳さんと考えるLIVEエンタメの苦境 

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