新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」が39県で解除され、初の週末を迎えた国内では、これまでと比べると各地で少し人出が増えた。感染拡大前に比べれば大幅に減ってはいるものの、少しずつ人出が増えていることに西村経済再生担当大臣や小池百合子都知事は「緩まないように」「今が頑張り時」としきりに呼びかけている。
臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は「感染者数が減ってきたというのは、我々の頑張りが数字に現れてきたということ。緩むという言い方が適切かはわからないが、日々の生活を少しずつ回復しようという気持ちが表れている」と分析。気持ちの緩みというよりも、少しでも日常生活を取り戻したい行動だとして「第2波、第3波に向けて、あえて緩ませて次に備えるというのも、我々の心を保ったり、長期的に対応していくためには必要」と、適度な緩みの重要性についても指摘した。
一方、心理学の専門家である藤井氏が気になっているのは、長期に及ぶ自粛生活が生む人と人との「分断」だ。人は自分の身体に関する不安や脅威が大きくなると、共感できる相手と結びつきたくなる。「内集団」と呼ばれるものだが、この傾向は結びつきと同時に排他的な行動も生むという。「全然考えが違う人(外集団)を排他的に扱ってしまうことが、お互いに起きる。それが人の分断を深めてしまう」と、結びつきを求めることによって真逆の分断を生むということが起こりうる可能性を指摘する。
「例えば自分の周りでも、対面での心理カウンセリングを従来通り継続していくかどうかは、自分や相談者を守るという観点からみても、判断が分かれるところ。悩みや不安の中にある人を放置できないという気持ちと、自分や相手の健康をまずは守りたいという気持ちが両立せず、それぞれの立場で結束することにより分断し、専門家同士が対立してしまうことも起こっている。コロナ禍による経済的不安の有無や、仕事(職業)を通じた個人のアイデンティティの問題が生じているかいないか等のポイントでも、同じようなことが起こりうる」とした。
また、藤井氏によれば「性格、立場、属性が違う中で、共感や感情の結びつきだけで成り立っている人間関係は、実は不安定」で、元来、結びつきが強い状態というのは「不快を共有している人間関係で、むしろそれぞれが互いの違いを認識・理解し、同じくらいの気持ちの悪さを抱えている状態があって、そしてそれに慣れた関係性」だという。つまりは安心を求め、同じ感情を持つ者のつながりは、「表面的であって、演技的な関係」。その感情が途切れてしまえば、浅い関係であるがゆえに、そこに新たな分断が生まれる可能性があると指摘した。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)




