「グローバルスタンダードに合わせたからといって、皆が留学するようになるとは限らない」9月入学論、大学教員はどう見る?
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(3枚)

 「世界のグローバルスタンダードを考えた時に、9月入学、9月始業というのがあるべきだと思っている」(大阪府の吉村知事)、「こういう時にしか社会というのは変わらないのではないか。その一つとして、9月スタートというのもありではないか」(東京都の小池知事)。

・【映像】「教員からするとコロナ問題で手一杯」内田准教授による解説

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための一斉休校に関連し、首長から「9月入学」を実現すべきだという声が浮上している。安倍総理も14日、「9月入学も有力な選択肢の1つだろうと思うが、拙速な議論は避けなければならない」と言及した。

 文部科学省が検討しているのが、来年9月時点で満6歳に達する全児童を入学させるという“一斉実施案”と、児童の就学年齢を1カ月分だけ拡大するのを5年にわたって続けるという“段階的実施案”だ。

 しかし朝日新聞によれば、イギリス・オックスフォード大学の苅谷剛彦教授の研究チームが一斉実施案の問題点として「新入生が例年より42万5000人増え1.4倍になる」「教師が2.8万人不足」「学習期間延長で家庭負担が増加すること」などと指摘していると報じている。

「グローバルスタンダードに合わせたからといって、皆が留学するようになるとは限らない」9月入学論、大学教員はどう見る?
拡大する

 名古屋大学大学院准教授の内田良氏は「学校が3カ月も休んでいるので、それを取り戻すためという非常に真っ当な理由があるし、直感的には“良いな”と誰もが思ってしまうと思う。そもそも教育界、教育の専門家で9月入学そのものがダメだという人もあまりいない。ただ、実現のためには様々な法令を変えなければならないし、あるいは就職や資格試験など、他の業界への影響があまりにも大きすぎる。グローバルスタンダードに合わせられるというメリットはあるが、恩恵を受けるのは海外に留学したい、あるいは日本に留学しに来たいという、ごく一部の人たちだ。そのために全てを動かすというのは、現時点では厳しすぎる。それよりも留学のための資金のサポートなどをしてあげた方が良い。時期をずらしたらからといって、ガンガン留学するようになるとは限らない」と話す。

 「オンラインでやってきた学校、あるいは親がしっかり見てきた家庭の子どもとそうでない子どもの間に、格差が生じてきている。これ以上、格差を広げない対策が必要で、コロナが落ち着いきたのであれば学校を再会し、そうでなくてもオンラインで学べるようにしていく必要がある。また、遅れた分をどうするかというところが課題になっているが、内容を削減したり、先送りしたり、あるいは入試の範囲を狭めたりすることで、夏休みを完全に潰すということなどはせずに進められる可能性もある」。

「グローバルスタンダードに合わせたからといって、皆が留学するようになるとは限らない」9月入学論、大学教員はどう見る?
拡大する

 また、大学教員の立場からは「やはり高校3年生は受難の世代だ。もうこれ以上困らせたくないなというのが、大学で受け入れる側としての感覚だ。高校を卒業して学ぶ機会がない時は、大学教員や社会がネット上に情報を出すなどしてフォローしていくこともできるのではないか。一方、今は大学教員も、さらに事務方もコロナ対応で精一杯。このまま9月入学という新たな制度改変をすることは考えられない。本音で言えば、冬に入試はやりたくない、それでも教育界としては、現状維持の方がまだいいと判断しているということだ」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:「教員からするとコロナ問題で手一杯」内田准教授による解説

「末端の教員からするとコロナ問題で手一杯」9月入学で受験・就職はどうなる?
「末端の教員からするとコロナ問題で手一杯」9月入学で受験・就職はどうなる?
9月入学大きな混乱 全国小学校長会
9月入学大きな混乱 全国小学校長会
9月入学案に日本教育学会が反対
9月入学案に日本教育学会が反対
この記事の画像一覧

■Pick Up
キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏

この記事の写真をみる(3枚)