政府は新型コロナウイルスによって困窮した学生への支援策として、アルバイトの収入が減少した学生らに10万円、住民税非課税世帯の学生らに20万円を給付する案をまとめた。16日のAbemaTV『NewsBAR橋下』では、この問題について乙武洋匡氏と橋下徹氏が議論を深めた。
橋下氏はまず、「自民党や公明党からも案が出ているが、学生1人につき文部科学省の予算で10万円給付するという案が出てきている。ただ、奨学金制度は最近ものすごく充実してきているし、お金に困っている世帯の子どもは学費が無償になっている。さらに給付型奨学金といって、私立の場合だと年に92万円ぐらいもらえる。そのくらい手厚いシステムがある中、10万円加算をどう考えるのかということだ。例えば全日空は夏のボーナスが半減だが、公務員は基本的に給料もボーナスは下がらない。そういう中で1人あたり10万円給付があるので、公務員は4人家族であれば追加で40万円がもらえることになる。もちろん、こういう状況の中なので、現場で頑張っている公務員には特別手当を出せばいい。しかし学生で考えれば、学費が無料になっていたり、返さなくていい奨学金92万円をもらっているような学生にも10万円が行ってしまうことになる。“国民を分断するな”というのは綺麗な言葉だが、僕は学費を自分のバイトから出している学生などの方にまずは回すべきだと思っている」と主張。
「学生を救う方法としては10万円一発じゃ絶対に無理だから、奨学金を拡充してあげて、必要なところにはどんどんお金を貸してあげる。そして社会人になった時に、所得の低い人は少額の返済、所得が高くなればちょっと大きめの額を返済するというような所得連動型の奨学金制度にすべきではないか」。
乙武氏は「何のために奨学金があるのかといえば、家庭によって経済状況がバラバラだからだ。つまり元々の差異を埋めるための制度なので、コロナによってどうなったのかということとは別問題だ。だから一律に10万円を支給してもいいと思う。ただ、学ぶ権利がきちんと保障されないといけないと思っているし、救済するなら、無償で休学できるようにするのがベストではないか。今は登校することができないし、理系の学生であれば実験ができないような状況になっている。確かにオンライン授業はできるかもしれないけれど、普段と同じ額の学費を納めろというのは矛盾があるのではないか。一方、学費を下げてしまえば大学としては教員の給料の問題などが出てくる。それなら休学という選択肢に対してお金は取らないということにして、しばらく待ってもらうのがいいのではないか」と提案した。
橋下氏は「ただ、制度の設計としては乙武さんが言われるようなきれいな制度にはなっていない。やはり“国民を分断するな”というのは確かに誰も反対しない、綺麗なフレーズだが、現実の政治に落とし込んでいくと、実はかえってこれで格差が開いていくことが生じる。学生の話についても、低所得者層にはすごい手厚く学費だけではなく色んなものがあるので、現実的には中間所得者層がダメージを受けてしまう。僕が言いたいのは、政治というのはフレーズとかきれいな言葉でやるのではなく、現実を見ないといけないところがあるということだ。本当に公平を目指そうと思うなら、ある程度余裕のある人にはちょっと辞退してもらう。そして、お金の余裕のない人のところにどんどん支給していくということを大原則にしないと、格差は埋められないという思いがずっとある」と話していた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)





