新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校が続く中、学校の入学などを現行の4月から9月に変更する「9月入学論」が浮上している。16日のABEMA『NewsBAR橋下』では、教員や東京都教育委員の経験もある作家の乙武洋匡氏と橋下徹氏がこの問題について議論した。
・【映像】橋下氏と乙武氏がコロナ時代の教育について対談
乙武氏はまず、「橋下さんが“今じゃなきゃできない”とおっしゃる意味もわかるし、僕としても積極的に賛成するわけではないけれど、反対する理由はない。ただ、子どもたちや教育現場が様々な課題を抱えている中で、最優先で取り組むべき課題がこの“9月入学”と言われればNOだと思う」と自らの立場を説明。
すると橋下氏も「賛成か反対かと言われれば賛成だが、4月入学・3月卒業から9月入学・8月卒業に時期をずらすだけなら違う」とした上で、次のように指摘する。
「今は保育園、幼稚園、小中高大の2000万人が画一的なシステムで動いているが、全員を同じスケジュールに当てはめるような教育は古いんじゃないの、ということだ。これからコロナの第二波、第三波が来たときに、4月で始まり3月で終わるような画一的なシステムではもたないと思う。そうではなく、個人にフィーチャーして、“これだけのプログラムを修了すればいいですよ”という教育にシフトさせるチャンスだということだ。その意味では、4月でも9月でも、どちらでもいい。実は大学入試改革で複数回の入学試験を、という議論もあったが立ち消えになっていた。大学受験も国家試験も、企業の採用も年中通して、プログラムを修了した子どもたちが都度受けられるようにすればいい」。
これに対し乙武氏は「私が小学校教員を3年間やったとき、同じ3年生のクラスの中に2年生でやる九九をマスターできていない子と、休み時間になると司馬遼太郎を読みふける子がいた。担任としては真ん中に合わせて授業をしないといけないが、そうするとできない子は落ちこぼれていくし、できる子は“つまんねえな”となってしまう。日本は学習指導要領に標準授業時数が決められているが、橋下さんがおっしゃったとおり、例えば“小学校6年間でこのことをやってくださいね”というような、もう少しざっくりしたくくりにして、子どもの進度に合わせてやっていったほうが、学力が自分のものになっていくと思う」とコメント。
「オランダで行われているイエナプラン教育では、基礎学力には差があるので、基本的に午前中は一斉授業を行なわず、それぞれ時間割が違う。自分なりにカリキュラムを組んで、日本で言えば“この時間は漢字”“この時間は計算”と、いわば自習のようにして、午後はグループごとにテーマを決めて調べたり発表したりするプロジェクト学習に充てている。ホームルームも異年齢の集団だ。1、2、3年生、4、5、6年生に分かれている。一斉授業についてはバラつきが生まれてしまうが、“あいつはこれができない”“あいつはここが俺たちと違う”というようないじめは起こりにくい」。
橋下氏は「今の日本の教育システムは確かに素晴らしいんだけど、乙武さんが言うように、できない子どもか、もっと分かる子どもがほとんどであって、文部科学省の想定したカリキュラムにぴったり合うという子どもはごく少数だと思う。昭和の時代はそれでよかったのかもしれないが、オンラインも使って個人の進度で授業をやっていけるような環境になったんだから、それこそ大チャンスだと思う。今、各地域で休校を終える・終えないもバラバラになっているのに、文科省が“来年の3月までに授業を終わらせろ”言ってしまえば、また4月~3月のままだ。オランダのイエナプラン教育を一気に導入するのは難しいかもしれないが、大阪府知事時代、クラスを細分化しながら習熟度別の授業をやろうとしたら、教育現場や教育評論家からクソミソに言われた。子どもを区別するなとか、できないクラスの子ども達はプライドを傷つけられるという議論になってしまった。集団生活も教育なので、ホームルームや修学旅行をやるクラスは年齢によって単位は作っていかないといけないが、科目によって進度はバラバラにしてもいいのではないか。でも、そんな大胆な仕組みを文部科学省の官僚がやれるかと言ったら…。議論はしても夢物語で終わってきたのが今までの流れだったけれど、今回は文部科学大臣が『いや、それは違う』と言って来年3月までではなく、1年間を保証してくれれば、システムも崩れていくと思う」と語った。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)





