新型コロナウイルスの影響を受けた子どもの学びを保障するため、選択肢の1つとして検討されている9月入学。複数の導入案の中で「小学0年生」を新設する案も出ており、保護者などからは戸惑いや反発の声が上がっている。
この9月入学は、2つの案をベースに政府が検討を進めている。1つ目は、2021年9月の時点で満6歳に達する17カ月間のすべての児童を同時に入学させる「一斉実施案」。2つ目は、新1年生となる児童の対象年齢を毎年1カ月ずつずらし5年間かけて移行する「段階的実施案」だ。
そして、ここにきて新たな案として浮上しているのが、「小学0年生」を新設するという案。直近のケースで考えると、2014年4月2日~2015年4月1日生まれの現在の年長クラスに加え、現在の年中クラスのうち2015年4月2日~6月1日生まれまでの子どもたちまでが同じ1つの学年となり、新入生の対象になる。対象となる子どもたちは、2021年3月に幼稚園や保育園を卒園したあと小学校へ通うことになるが、4月から8月にかけては「ゼロ年生」として学校生活を送り、9月から1年生になるというものだ。また、この案では6年かけて9月入学に移行していくとなっており、小学校はこれまでの6年から6年5カ月に延びることになる。
この「小学0年生」案をめぐり、Twitter上では「#小学0年生 なんてありえません」「9月入学、思ってたんとちゃうぞ!!」「幼児教育を軽く見すぎ」という声があがっている。また、幼稚園の年中組で4月生まれの子を持つ親も驚きと戸惑いを隠せない。
「4月5月とも幼稚園には行けていない状況で、年中さんから突然0年生になって年長さんを一切経験できないというのは、あまりにかわいそうだなというのが正直なところ。9月入学という世界の標準に合わせるのは必要かなと思わなくはないが、下の方の学年であればデメリットが少ないだろうということで、今の5歳の子どもたちにこれだけの負荷を背負わせていいのかなという疑問はある。下の学年から上の学年にさせられて、さらに厳しい受験、厳しい就職活動を乗り越えないといけないのかなと思うと、かなり不利だなと思った」
9月入学をめぐり検討が進められているどの案でも、現在の年中クラスで4月生まれの子どもは年長クラスを経験せずに小学校に通うこととなる。
「実をいうと、将来的な受験などのことも含めて有利かなと思い4月生まれにしたかったというのもある。そう思って4月生まれを選択していたにも関わらず、結果なぜか大きなデメリットを背負わなければならない」
「小学0年生」案については、教育課程の検討が早急に必要となるなど課題が多く、今後の議論に注目が集まっている。そんな中、例年30校の幼稚園や小学校にコンサルテーションを行う臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「新型コロナで失われた2、3カ月を取り戻すためなら9月入学にする必要はなく、教育カリキュラムの見直しや効率化を進める方がいい。ただ、9月入学は国際化の利益はある」との見方を示す。
また、移行案の課題として、1学年の人数が増えて発達の差が大きくなり学校教員の増員が必須となること、不利益が生じないよう受験や就職までの制度設計がいること、移行期には柔軟性を持たせる必要があることなどをあげる。
牧師のアーサー・ホーランド氏は、自身が9月入学を経験した立場から9月入学に賛成の立場を取る。「子どもを育てている、教育を考えている親にとっては悩みだろう。僕自身は9月に入学して6月に卒業するインターナショナルスクールに通っていた。とはいえ、小学校は日本だったので、1年留年することになった。いろいろ複雑な面もあるが、『人間は何事にも慣れる存在だ』とドストエフスキーは言っている。今は改革の時だから悩むのだろうと思うが、それも段々慣れていくだろうとポジティブにみている」。
一方、フリーアナウンサーの柴田阿弥は、4月1日生まれという“究極の早生まれ”の立場から言及。「小さい頃の1年はかなり大きい。私は特に体力差を感じて、自分は運動ができないとずっと思い込んでいた。12カ月でも相当な差があるのに、例えば一斉実施案で17カ月となったら相当大きい差だと思う。もしかしたら将来に大きな影響が出てきてしまうのではないか」と懸念を示した。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)








