「子どもと関わる時間を確保しながら高い収入を得るのは“無理ゲー”だ」 “シンパパ”たちが抱える、男性特有の悩みとは
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 コロナに伴う一斉休校、外出自粛、そして休業要請で悩みを抱えるひとり親家庭。中でも母子家庭123万世帯に比べて18万7000世帯と数が少ない父子家庭がクローズアップされる機会は決して多くはない。そこで26日の『ABEMA Prime』では、2人の“シンパパ”を取材した。

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■「料理に関しては、本当に妻に任せきりだったので…」

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 中学1年の息子・真輝くんと公営住宅で暮らす衣斐隆さんは、2カ月ほど前に妻と離婚した。大学卒業後、1年ほど写真スタジオに勤めた後、フリーのカメラマンとして独立。学校行事やイベントなどの撮影で収入を得ていたが、家計は共働きで支えていた。「フリーランスということで、やはり収入は不安定でしたから、彼女(元妻)に不安な部分が絶対にあったと思うんです」。

 厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」(平成28年度)によれば、母子世帯の平均年収が243万円となっている一方、父子世帯は420万円となっているため、「父子家庭はお金に困っていない」という認識を持った人も社会には少なくない。しかし住宅・車のローンは父親側が組んでいる場合も多く、生活費に困るケースも多い。

 衣斐さんの場合も、離婚によって収入は半減。さらに新型コロナウイルスの影響で仕事はゼロになってしまった。今は週に6日のアルバイトで何とかやりくりしている。「貯金を切り崩してなんとか生活費に当てていいます。カメラマン仲間と先の見通しについて話したんですが、みんな口を揃えて“先が見えない”と」。

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 家事は女性が担うことが多いのが現実。衣斐さんも他のシングルファザー同様、炊事や洗濯に頭を悩ませている。「料理に関しては、本当に妻に任せきりだったので。洗濯も、カミさんが置いていった柔軟剤の使い方も分からなかった。干すまではいいんだけど、取り込んで畳むのが嫌いで。意外と面倒ですよね。今月からは月曜から土曜までみっちり肉体労働をした後に家に帰って、“ご飯作らなきゃ。洗濯をいつやろうか”と。そうこうしているうちに気がついたら夜の9時、10時ということになってしまいます。自分のことはできないまま、1日が終わってしまうというところがありますね。今日は息子の登校日だったんですが、休校期間中の課題についてのコミュニケーションができていなくて、蓋を開けて見たら全然できていなかったということが起きました…」。

 シングルファザー特有の悩みとして、近所付き合い、学校行事の問題もつきまとう。「私の場合は仕事で学校を撮っていましたし、不定休なので、1年生から今まで授業参観や懇談会にもほぼ参加してきました。ただ、学年でお父さんは私1人くらいだったので、やはり馴染めないと感じる男性は多いと思いますね」。

■「頑張れている理由は、やはり息子がいるからだと思います」

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 真輝君の前では愚痴や悩みは言わないと決めている衣斐さんだが、将来の不安は拭えない。「今まではカミさんに任せられた部分も多かったんんですけど、自分はこういう仕事なので家にいないことの方が多いですから。息子が一人で次の日の準備して、一人で寝てと思うと…」。

 母親と離れて2カ月、寂しさを感じながらも家事を手伝ってくれる真輝君。休日には父との共通の趣味・鉄道を楽しんでいる。また、幼い頃から衣斐さんの手ほどきを受けていた真輝くんのカメラの腕前は、コンクールで入賞するほど。

 真輝くんが撮影した江ノ電の写真を見た衣斐さんは「俺でも“おっ!”って思う」と笑顔を見せる。「息子さんの写真と自分の写真、どちらに軍配を?」と尋ねると、「まあ引き分けってことにしといてやる…。すみません、また再チャレンジさせて下さい(笑)」と真輝くんに微笑みかけた。

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 「お父さんはどういう存在ですか?」そう尋ねると、真輝くんは「なくてはならない存在だと思います。やっぱり、ずっとお父さんと一緒にいたいです」と話してくれた。

 一方、「言うことを聞かない時もありますけど、それは反抗期だと思って。自分が頑張れている理由は、やはり息子がいるからだと思います。もし親権を(元妻に)持っていかれてしまっていたら、それこそ生きがいを失ってしまっていたかもしれないですし」と話す衣斐さん。「宝物に変わりはないです。2人で育て上げるものが、1人で育て上げることになってしまったので、その分、重みも感じています」。

■「子どもと関わる時間を確保しながら高い収入を得るのは“無理ゲー”だ」

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 2003年に離婚、同じ年に祖父の介護と長男の白血病の治療に直面したのが、村上吉宣さんだ。現在、障害福祉サービスの就労支援員として働きながら、2児(長男18歳・長女17歳)を育てている。子育てと並行して2008年には「宮城県父子の会」、2015年に「全国父子家庭支援ネットワーク」を発足させ、現在は代表理事を務め、父子家庭支援を続けてきた。

 「特に大変だと感じたのは、やはり子どもと仕事のバランスをどうするかということです。実は借金を残して去っていく奥さんは多く、私の場合もそれを背負ってシングルファザーになったので、当初はアルバイトを3つ掛け持ちしました。そのせいで、子どもに会えるのは保育園に送り届ける時だけでした」。

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 実際、全国父子家庭支援ネットワークに寄せられる相談内容で最も多いのが「お金」の問題、次いで「子育て」となっている。国としても、様々なひとり親世帯への支援策を用意しているが、村上さんは「不十分な状態が何十年も続いている」と指摘する。

 「子どもとの時間を増やしていくためにも、経済的な下支えが必要だということです。確かに父子家庭の平均所得は母子家庭に比べると高いのですが、実は年収が300万未満という父子家庭も30%ほど存在しています。児童扶養手当の額は、遺族基礎年金8万円の半分に設定されているのですが、ひとり親支援団体の多くは“遺族基礎年金と同じくらいまで引き上げる必要がある”と訴えてきました。また、ひとり親家庭支援の制度はいろんな制度と紐づいているのですが、父子家庭支援の場合、例えば男女共同参画事業の中に男性の生き方支援、生きづらさの相談窓口であったり、キャリアプラン、ライフプランという事業が用意されていないため、仕事の部分の見通しを一緒に考えてくれるプランナーが存在しないのが現状です」。

■悩みを抱え込んでしまい、精神衛生上良くない状態に陥ってしまうことも

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 また、悩みや問題を周囲に相談できないという問題もある。村上さん自身、「相談できる人もいましたが、男性目線で、男性同士の感覚で話をできる場所もありませんでした」と振り返る。東京都ひとり親家庭支援センターのデータでは、相談件数の内訳は「父子世帯:約1%」「母子世帯:約99%」となっており、相談相手が「あり」と回答した割合は「父子世帯:約55%」「母子世帯:約80%」で、「相談相手は必要ない」と回答した割合も高いようだ。

 「学校との付き合い方の悩みも“父子家庭あるある”で、親父の会などに参加することができればいいのですが、生活をするための仕事に7~8割エネルギーを使って、残りの2~3割で子育てと地域活動をやっていくというのは。やはり“無理ゲー”です。世のシングルファザーは睡眠時間を削るだけ削って、家のことやったり、子どもの宿題の様子を見たりするしかなく、そういう生活を何年も続けているうちに病気になってしまうシングルファザーもいます」。

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 父子家庭の問題を取材、自身の運営する『リディラバジャーナル』に記事を掲載したリディラバ代表の安部敏樹氏は「核家族化が進行し、地域のコミュニティが無くなる中、学校の子育て機能も少しずつ失われてきている。そういう中でひとり親になるということは、本当に厳しい。そこに男性ならではの難しさが加わってくる。悩みを抱え込んでしまい、精神衛生上良くない状態に陥ってしまうこともある。やはり日本は“女性が子育て”というイメージが根強いので、ひとり親支援と、シングルファザー向けの支援の部分の二段構えで考えて行く必要がある」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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