ネットは世論の本流か? SNS中傷・法整備に若新雄純氏「まだ距離感も必要では?」
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 インターネット上で誹謗中傷を受けていた、女子プロレスラーの木村花さんが23日に亡くなったことを受け、SNSの事業者団体「ソーシャルメディア利用環境整備機構」は緊急声明を発表した。個人に対する名誉毀損や、嫌がらせなどを意図した投稿を禁止し、違反行為を把握した場合は、サービスの利用停止などの措置を徹底するという。さらに嫌がらせなどの被害を受けた人から加害者の情報開示を求められた場合には、各事業者が法令に基づき情報を提供するとしている。

▶【動画】一部の声ではなくなりつつある「ネットの声」

 行政も動き出し、高市総務大臣は悪質な投稿者を特定しやすくする制度の改正に向けて、検討を急ぐ姿勢を示した。投稿者を特定する手続きを簡略化するほか、発信者の氏名や携帯電話番号を開示対象に含めることも視野に入れているという。

ネットは世論の本流か? SNS中傷・法整備に若新雄純氏「まだ距離感も必要では?」
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 SNS上での誹謗中傷をきっかけによる悲しい出来事や、法整備について語られる様子に、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「このSNS空間を、パブリックな世論の場として受け止めていく方向に行くんだな、ということに驚くとまでは言わないが、そうなってきたかという感じ」と率直な感想を述べた。

 ひと昔前までは、SNSを含むネット上の声は、あくまで「ネット上での声」という認識だったが、「最近は、政治家の人たちが、SNSでの声や意見を重要な世論として捉えてきている」と、受け取り方が変わってきていると指摘。若新氏自身は「SNSの世界は、場の一つでしかないと思っていたし、社会の人々の考えや意見が発信される中心でもないだろうと距離感があった。ただ最近は、社会全体がSNSで発信されることを世論の本流であるかのように捉えてきている」と、“一部の声”がいつしか“大半の声”という認識に変化しているという。

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 木村さんの死についても、この「世論の本流」と考えると、より苦しいことだったことがわかる。「ネット上がちゃんと整備すべき世論の本流だと言えば言うほど、そこで批判されることはつらい。世の中が本流だと見ているところで誹謗中傷されたら、自分を本当に否定されていることになってしまう」と持論を述べた。以前なら、ネット上で叩かれても、それは一部の人が騒いでいるだけだと流せたかもしれないが、それが大半の声だと思ってしまえば、逃げ場がない。

 もし、このSNSの世界を世論の本流とするのであれば、当然法整備やルールが必要だ。若新氏自身は「まだパブリックな場として捉えるには、僕はまだ不十分ではないかと思っていた」が、「これを本流のパブリックな場として扱う以上、道路に例えたら『ここは公道です』という標識を立てないといけない。スピード違反したら警察が捕まえるように。ただ、そうなれば今までのような、自由なネット空間というものからちょっと変わってくる。インターネットの言論空間とかSNSの世界というものが、僕らの日常にとってどういうものなのかを考える転換期に来ていると思う」と述べた。

 人々が自由に発信できることで発達してきたインターネット、SNSの世界。全ての人が参加しているわけでもないことから、社会の一部分として認識されてきたものの、今や世の中の本流部分だという認識も強くなってきた。「僕はまだ、法整備をするにも、限界がある空間だと思っている。安心できる場所になることが理想ではあるが、ネットの世界が、世の中の全てではないと距離感を取って付き合うことも大切だと思う」という若新氏とは締めくくっていた。

ABEMA/『けやきヒルズ』より)

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