将棋の超早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」の予選Cリーグ第2試合、チーム木村VSチーム糸谷が5月30日に放送され、先鋒戦で木村一基王位(46)が高見泰地七段(26)との三番勝負で2勝1敗、+1ポイントを獲得した。個人戦だった過去の大会で、ベスト4入り経験者同士の戦いとなったが昨年、史上最年長でタイトルを獲得した木村王位が、若手有利と言われる早指しで、高見七段をも上回るスピードを発揮。懐の深さも見せる“中年の星”が、またしても輝いた。
この戦いぶりを見れば、「早指しは若手有利」という定説に首をひねりたくなる。それほどまでに木村王位の強さが際立った。他チームがリーダーを大将戦に置くことが多い中、チーム初戦の先鋒戦で「チームの士気に関わる大事な一局」とトップバッターを務めると、対局前に高見七段から「トークも将棋も木村先生の方が上」と言われたことに「しゃべりながら指そうか」と、余裕もたっぷりだった。
注目の第1局は、お互い超早指し戦の経験者ということもあり、数秒で指し進める序盤戦に。中盤、終盤のために時間を残す戦術が、しっかり身についていた。それでも徐々にリードを広げたのは木村王位。チームメイトの行方尚史九段(46)が「昨年のトーナメントでは若手をなぎ倒しているからね」と語ったように、完璧な指し回しを披露。中盤にして行方九段が「これは仕上がったでしょ」というほどの出来で、叡王のタイトル経験もある高見七段を、完封と言っていい内容で制した。
続く2局目は、高見七段に意地を見せられ「一発入れられて、勝負どころがない感じになった」と完敗。それでも第1局を取っていた余裕からか、ベテランらしい経験からか、慌てる様子一つ見せず、涼しい顔で最終局へと向かっていった。
勝ち越しをかけた第3局も、決して木村王位のペースではなく、むしろ序盤は高見七段が優位に立ったと思われた。ところがここから「千駄ヶ谷の受け師」と異名を持つ、独特の受けのテクニックで対応。解説していた横山泰明七段(39)からも「玉周りの駒の使い方がすごい」と、ため息含みの絶賛が出るなど、まさに木村ワールド全開の戦いぶりで勝ち越しを決めた。
昨年、タイトルを取った際には、何度も獲得まであと一歩というところでチャンスを逃した末、ようやくつかんだ初タイトルということもあってか「中年の星」として、各メディアでも大きく取り上げられた。昨年行われた個人戦の第2回大会でも、若手を上回るほどのスピードで指し続け、周囲を驚かせ、連覇を遂げた藤井聡太七段(17)ともフルセットの激闘を繰り広げた。本人は衰えを口にするものの、46歳にして充実期を迎えたとも言える木村王位の分厚い壁は、そう簡単には崩れない。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行い、1回の対戦は三番勝負。3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝賞金1000万円。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)
(ABEMA/将棋チャンネル)