プロレスリング・ノアにまた1人、強豪レスラーが参入してきた。
5月31日に配信された無観客試合『NOAH NEW HOPE』第2回。メインイベントではこの大会の主役であるノアの新世代エース・清宮海斗が稲村愛輝とシングルマッチを行なった。稲村も将来を嘱望されるヘビー級のホープだ。
会場は通常より小さいリングを使っての試合で、相手は体格、パワーで上回る。そんなシチュエーションで、清宮はグラウンド戦法を多用していく。パワーに対抗するという意味でも、リングのサイズの影響を受けないという意味でもクレバーな闘い方だ。ハンマーロックにアームバー、キーロック。稲村が切り返そうとしても阻止し続け、主導権を握った清宮。こうした“地力”をファンに見せていくのも大事なことだろう。
まして清宮は前週の試合で「レインメーカーを体感したい」と、オカダ・カズチカとの対戦をアピールしている。注目度が上がったところだからこそ負けるわけにはいかなかった。
稲村も豪快なタックル、スピアなどパワフルな攻撃が光ったが、最後は清宮が変形エメラルドフロウジョンでフォール勝ちを収めた。必殺技タイガースープレックス以外のフィニッシュが増えているのも、清宮の意欲の表れではないか。
「プロレス業界のどこにもない景色を見せていきたい。そのためには失敗なんて恐れていられない。俺が必ず、どこのリングより注目される刺激のあるリングにしていきます。スーパーノヴァ、超新星爆発、期待してください」
大会を締めた清宮だが、そこに登場したのが稲葉大樹だ。退場しようとした清宮と睨み合いを展開した稲葉だが無言のまま。とはいえ対戦要求なのは間違いない。
稲葉はWRESTLE-1(W-1)でシングル王座に就いたこともあるトップの一角。団体の活動休止を受け、新たな戦場をノアに定めた。W-1からはすでに征矢学、吉岡世起もノアに参戦。ノアマットの“群雄割拠”ぶりがさらに凄まじいことになる。
稲葉の登場に、清宮は怒りと戸惑いを隠せない。
「いったいなんで入って来たんだ? 前に組んだ時とは違う目してたぞ。参戦の決意表明ならもっと主張すればいいんだ。俺は誰の挑戦だって受ける気でいる。稲葉選手、俺は思いっきりやるつもりです」
稲葉のターゲットが清宮であることは明白。清宮も受けて立つ構えであり、対戦は避けられない流れだ。無観客でも動き続けるノアは、次々と“事件”が起きる強力な磁場となっている。
文/橋本宗洋