白人警察官が黒人男性を死亡させた事件に対する抗議行動が全米に広がり、一部の参加者が過激化。死亡した男性の弟がこの状況を憂慮し、「皆さん抗議のやり方を変えましょう。お願いですから平和的に行いましょう」と、暴力行為を止めるように呼びかける事態となっている。
一方、州兵の動員を要求し、州知事が応じない場合、軍を動員するとし、ワシントンは警察官に加え、軍の憲兵隊を投入していることを明らかにしているトランプ大統領。その強硬姿勢はツイートにも現れており、先週末には「略奪が始まれば銃撃を始める」と投稿。Twitter社ではこれが「暴力を称賛する」ものだと警告、クリックしなければ表示されないという措置を取った。しかしトランプ大統領は「野放しの権力を有している」と同社を強く非難。ネットの表現の自由をめぐって、SNSが揺れている。
今回の問題についてソーシャルメディアと政治の問題に詳しい平和博・桜美林大学教授は「トランプ大統領のこれまでの発言やツイートについては、複数の報道機関やファクトチェック機関が事実と照らし合わせて検証したところ、実に7割近くに誤りが含まれていたとされている。一方、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアでは、フェイクニュースが氾濫しているのを野放しにしているという批判を受け、誤った情報についてはチェックした上で排除する取り組みをしてきた。今回の一連の対応も、その延長線上にある」と話す。
「先日、トランプ大統領が大統領選に関して“カリフォルニア州などが新型コロナ対応として郵便で投票できるということを表明しているが、それは不正の温床になる”という内容のツイートをしているが、Twitter社ではこれが事実と異なるとして、警告ラベルを表示していた。トランプ大統領はこれに対し、これまでコンテンツに関して免責を認めていた法律を撤廃するという内容の大統領令に署名している。そして、今回の非常時対応だ。言葉としてかなりきついし、読み方によっては暴力を肯定していると受け止られてしまうものだという判断だったのだろうと思う」。
一方、トランプ大統領の主張については、「Twitter社が検閲を行ったと受け止めているのだろう。トランプ大統領は前回の大統領選の時から意見を世界に発信するためのメディアとしてTwitterを最大限に活用、“ツイッター大統領”とも言われた。新型コロナウイルスが感染拡大の中、自身に批判も集まっているし、11月には大統領選も控えているので、ここで強気の姿勢を見せておきたいという思いもあると思う。それが今回の大統領令に繋がっている。これまでソーシャルメディアは“場を提供しているサービス”と位置づけられ、事業者は誰が何を書き込んでも基本的には責任を問わないという考え方で守られてきた。しかし自分のツイートや保守派のツイートにたいし検閲のようなことをし、排除しようとするのであれば、その免責をはく奪し、責任を問おうということだ。ただ、法的な効力はないだろうというのがアメリカの専門家たちの見立てだ」と説明した。
確かに、事業者が投稿を管理できるという恣意性には問題があるというトランプ大統領の主張には、一定の合理性もある。SNSのもう一方の雄、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは去年10月の公聴会で「政治家を含む誰かが暴力や身体的危害を引き起こすような投稿をしたら、我々はその投稿を削除する」と発言しているが、今回のトランプ発言に対しては、何の措置も講じていない。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ザッカーバーグCEOは“トランプ大統領の発言については削除しない。為政者が何を言っているのかを知ることは我々にとって必要なことだからだ”と説明している。もう一つは、アメリカではヘイトスピーチ、憎しみの表現に当たるかどうかということについて、“明白かつ現在の危険という”基準がある。これについてはザッカーバーグCEOも“差し迫った危険を引き起こさない限りは、できるだけ多くの表現は自由にすべきだ”と指摘している。そう考えると、なかなか難しい問題ではあるが、Facebookの判断も妥当だと言えるのではないか」と話す。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「トランプ大統領が企業の業績にそれなりに貢献しているという見方もできる中、Twitterとしては正義感をもってやっているのだろうと思う。しかし、その正義が怖いと思うこともあるし、場を提供しているだけなのか、一定の編集権限と責任を持ってやっていくのか」とコメント。ウツワ代表のハヤカワ五味氏も「ランプ大統領は前回の大統領選でFacebookに広告を出稿ていた。そういう面では、Facebookが広告主に忖度してしまうという問題もある。そういう利害関係も併せて考えた方が良いのではないか」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
▶映像:平氏、佐々木氏による解説
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