「日本の政府・自治体関係のウェブサイトにはろくなものがない」定額給付金のオンライン申請めぐる混乱に佐々木俊尚氏
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 コロナ禍に対して政府が講じた「特別定額給付金」に対し、対応スピードの遅さを指摘する声が相次いでいる。さらに事務手続きの混乱から、オンライン申請の受付を休止するという自治体も現れている状況だ。

・【映像】水町弁護士による解説

 そこで自民党が提言したのが、マイナンバーの活用だ。本人の同意を得た場合についてIDと紐付いた口座の名簿を作ることで、災害時などに迅速に現金給付ができるようになるという構想で、与党内の調整を経て法案を提出する。本国会での成立を目指している。

 これと並行して議論されているのが、政府が進めている、全ての口座とマイナンバーの紐付けを義務化する法整備だ。菅義偉官房長官は「相続や災害の際の負担軽減などのため、すべての口座をマイナンバーに紐付けることについても、年内に関係省庁と検討することになっている」と説明している。

 しかし、こうした動きに対しては「個人情報を管理されるのは抵抗がある」「別会社に業務委託して情報流出などはないだろうか」といった懸念の声も跡を絶たない。

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 マイナンバー法の制度設計に携わった水町雅子弁護士は、定額給付金の支給をめぐる混乱について、「オンライン申請の入り口となるページが急いで準備されたが、申請をオンラインで受け付けた後、それをどのようにして処理していくかという視点が欠けていたと思う。データを紙に出力して確認し、もう一度データを入力している自治体があるとの報道もある。また、マイナポータル自体でもエラーが頻発しているという。受け付けた後にやっぱりダメだったとなると迷惑なので、間違えて入力してしまった人は弾いてあげた方が親切だ。しかし、それもなかった」と話す。

 また、マイナンバー制度の課題「“怖いからあまり使わない”“何のために入っているのか”“何の効果もない”“じゃあ入れなければいい”という話になってしまっていて、活用もうまくいっていない。活用して効果を出さない限り、入れた意味がない。一方で、役所というのは安全にしよう、間違いがないようにしよう、対面ならなりすましも起きにくい、という考え方をするので、利用者側から見ると、すごく面倒だ。 オンラインバンキングでパスワードを間違うとロックされるが、電話などで解除することができる。しかしマイナンバーには民間サービス的な発想がないので、自治体の窓口に行かなければ解除できない」と指摘。その上で、今回の制度案について「次に今回のような給付金を実施する場合、口座が分かっていればそれだけ手続きが早く済むので、価値はあるかと思う。ただ、様々な自然災害が起きた時に国民にどういう問題が起き、どういうことが必要になるのかを考え、それに対してマイナンバーで何ができるのかということも考えていかなければならないと思う」とコメントした。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「僕は渋谷区に住んでいるが、給付金はオンラインではなく、郵便で申請して下さいと言っている。そんなことまで言わないといけない状況だ」と嘆く。

 「マイナンバーを設計された方を前に言うのも何だが、海外のGAFAと言われるプラットフォームのウェブサイトに比べて、マイナポータルはデザインもひどい。マイナポータルで手続きをようとしたらパスワードが通らず、調べてみたら、パスワードを発行してから誕生日を4回迎えると失効するということが分かった。Amazonなどで、4年が経ったからといってパスワードは失効することはない。登録しておいた携帯電話にコードが送られてくる2段階認証が世界標準だが、それもない。そもそも日本の政府関係や自治体関係のウェブサイトはろくなものがなく、デザインやUI・ユーザーインターフェースに対する軽視は本当にひどい。おじいちゃんでもおばあちゃんでも子どもでも誰でも使えるようなウェブサイトを作った上で、マイナンバーの制度を広めないと、“こんな使いにくいものを誰も使わない”というのがいつまでも続くと思う」。

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 また、政府関係者は「給付の迅速化で利便性を実感してもらい、紐付けをしてもらうことで税金の取りっぱぐれ回避につなげたい。政府は声高には言えないが、最終的には口座の紐付けの義務化までもっていきたい」と話しているという。

 佐々木氏は「ほとんどの会社員は100%源泉徴収されているが、個人事業主や経営者についてはどれくらい資産を持っているかが分からないので、どのくらいの税金を徴収していいのかということも分からない。このことについては1970年代から個人識別番号を作って銀行口座を紐付けしようという議論がなされてきたが、その度に“気持ち悪い。心配だ、不安だ”という、“コンピューター怖い問題”で全部ダメにしてきた歴史的経緯がある。“今回の給付金を機に”、という政府のやり口は姑息だとも思うが、今がチャンスだからやってしまおうという気持ちは分からないでもない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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