家庭ごみ急増による感染リスク、事業系ごみ減少による倒産リスク…日々収集に携わるエッセンシャルワーカーたちの苦悩
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 緊急事態宣言に伴う外出自粛やリモートワークなどより急増する家庭ごみ。その収集を通して、自宅で過ごす私たちの生活を支えてくれているのが、自治体、そして委託を受けた民間の作業員たちだ。

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■リスクと闘いながらティッシュペーパーを収集

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 『ABEMA Prime』が東京都足立清掃事務所の収集に同行させてもらうと、あるマンションでは出入り口を塞ぐほどのごみが出されていた。しかも、この日は可燃ごみの日。口が開いたままの袋、破けて穴の開いた袋から覗く使用済みマスク、そして散乱する大量のティッシュペーパー。感染リスクと闘いながら、ひとつひとつ拾っていく。

 そのうちに、作業員の一人から、「やべぇこれ!!混ざっていた!分からなかった」という声が上がった。可燃ごみと共に袋から出てきたのはスプレー缶。ごみの中にライターが混じっていた場合、収集車の中で引火し火災になる危険もあるのだ。このようにして1チームが午前8時から正午までの間、東西約500m・南北約850mの範囲にある約70カ所の集積所を回る。収集車が満杯になれば、一度工場へ捨てに行き、再び集積所を回ることになる。

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 作業員たちの頭を悩ませるのはそれだけではない。分別などのルールを無視のごみ出しも多く、その都度、正しいルールを知ってもらうためにシールを張り付けていく。「職員が可燃ごみと一緒に出されたフライパンや皿で誤って手を切ったり、体に当たって怪我をしたりすることがあるので困っている」(安部直樹・作業係統括技能長)。また、粗大ごみに処理券を貼り付けず、いわば不法投棄する人も少なくないのだ。足立清掃事務所所長の山本克広氏によれば、コロナ禍の影響か、不法投棄の通報は昨年同月比で約1.8倍に達しているという。

■感謝の声がけ、“ありがとうの手紙”も

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 お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一は、民間業者で収集員としても働いている「皆さんが在宅で仕事をしているということで、弁当、ペットボトルが、夜は家飲みということで発泡酒やレモンサワーなどのごみが増えている。ただ、衛生面、防災面からも、感染リスクがあるからといって回収しないわけにはいかない。恐怖と使命感の狭間で作業をしているような感じだ。可燃ごみに瓶や缶、断捨離の流れでリチウムイオン電池を入れてしまっている場合もあるので、分別のためにごみ袋を開けなければいけないが、自宅で療養されている方もいらっしゃると思い、覚悟して開けている」。

 防護服代わりに、雨合羽と防塵マスクを着用している。「自分の身は自分で守った方がいいなと思って、工夫しながらやっている。目からの感染も気になるので、シュノーケルみたいなものを付けている。ただ、合羽を着ていることで、軽い熱中症になった。これからどうしようかなと…」。

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 そんな中、滝沢は人々の変化も感じているという。「“お疲れ様”とか“また頼むよ”とか、声がけをしていただくことが増えたと思う。ニュースで見た方もいるかもしれないが、本当に“ありがとうの手紙”も見かけた。先日は小学校3年生ぐらいのお子さん2人くらいがカラス除けネットを開けて待っていてくれた。僕らの大変さが伝わっているのかと思って嬉しかった」。

■事業系ごみの収集・運搬業者には倒産危機も

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 そんな民間業者には、別の問題も浮上している。それが「事業系ごみ」の激減だ。営業自粛要請を受けて休業する店舗などが増えたことで出されるごみの量が半減。オフィスや飲食店などと個別に契約を結び、ごみの重量によって料金が決まる方式を取っている「白井グループ」では、売上が半分になってしまったのだ。「毎月の赤字の額が半端じゃない」(代表取締役の白井徹社長)。

 「コロナになる前に、海洋プラスチックの問題が報じられていたと思うが、我々もリサイクル、SDGs、サーキュラーエコノミーという旗印のもとに協力し、宅配やトラック、タクシー業界と人の取り合いをし、機材を投入して分別回収を徹底した。その廃棄物が突然無くなったということで、いわばダブルパンチを受けたということだ。緊急事態宣言は終わったが、オフィス、ホテル、飲食店の状況がすぐに戻るということはないと思うので、本当に大変な状況だ」。

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 AIを駆使し、運搬ルートの効率化も試みてはいるが、ごみの量は現場に行かなければわからないため、コスト削減にも限界がある。「間違いなく、同業他社が倒産していくという危機は迫っていると思う。そうなれば、ごみを回収する車が出なくなるということだ。どうやって業界で助け合っていくか…」。

 感染対策について白井社長は「家庭ごみは大量に扱うので、1人のドライバーと2人の作業員ということで、効率はいいが、ちょっと密になってしまうところがある。一方、事業系ごみはドライバー一人が乗ったり降りたりしながら回収する。マスク、手袋、抗菌スプレーなどを支給して、徹底的にやっている」と説明する。深夜2時、収集の様子を取材させてもらうと、運転・収集を一人で担う白井グループの北堀正雄さんは、除菌スプレーをかけて感染対策をしながら作業を行う。60代の米持賢治さんは「怖いなっていう気持ちはありますが、やっぱり世界が大変な時だから、使命感。自分でできる範囲でね」。

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 現場の従業員たちについて白井社長は「現場の仕事はどの仕事も同じだと思うが、僕たちは大雪の日も風の日も5時に現れなければならないし、その分、病気にならないようにしなければいけない。うちの場合、真夜中に出ていく部隊と朝5時に出ていく部隊があるが、辞めたいとか、途中で行けないという人は一人もいない。家族は怖がっていると思うが、みんな頑張っていると思うし、集積所に“ありがとう”と書かれていることがあるので、僕らの仕事を見てくれていると感謝もしている」と話した。

■エッセンシャルワーカーに敬意を払おうという機運が出てきた

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 番組には「収集をしてくれる人がいないと街が汚くなるので感謝を伝えたい。ストライキされたら困る重要な仕事だ」というコメントが寄せられた

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「家事のための様々な準備などのことを指す“名もなき家事”という言葉があるが、こうしたインフラもまた、“名もなき仕事”だと思う。高速道路を走っているときに、誰が作ったのか、あるいは誰が維持しているのか、といったことを人はあまり考えないが、ごみについても同じだと思う。今の日本は、いかにのし上がって金持ちになるか、みたいなことばかり考えている人が多い社会だが、今回のコロナによってこういうことが可視化され、社会のあちこちで働くエッセンシャルワーカーに敬意を払おうという機運が出てきたのは、ステイホームの効果かもしれない。また、ルートにAIを使っているという話があったように、エッセンシャルワーカーたちが働きやすいよう、テクノロジーを使って解決していく流れになれば、より包摂されたいい社会になるのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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