全米で広がる抗議デモと経済不安に若新雄純氏「『自己責任』社会への不満爆発か?」
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 アメリカの白人警官に取り押さえられたことで、黒人男性のジョージ・フロイドさんが亡くなってから1週間。全米の抗議デモは収まるどころか、警察と市民との衝突も相次ぎ、これまでに12人が死亡し、逮捕者は7200人にも上っている。連日続く、人種差別に対するデモ活動はSNSに形を変えて拡大。音楽業界を発端としたあるハッシュタグが話題になっている。

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 Instagramに並ぶ真っ黒い画面。その全てに「#Black Out Tuesday」というハッシュタグがついている。投稿数は実に2711万件(6月3日午前10時時点)。始まりはアメリカの音楽業界だった。

 2日に行われた「Black Out Tuesday」。この日はビジネスをやめ、黒人コミュニティへの連帯の方法を考え、行動に移す日にしようという趣旨に、多くのレコードレーベルや企業、アーティストが賛同。SNSでもこれを支持する黒一色の投稿が溢れた。

 アメリカの歌姫、リアーナも支持を表明した一人。さらに彼女は、自身のコスメブランドやファッションブランドでも、このキャンペーンを支持。すべての生産ラインをストップし、人種差別に抗議した。このキャンペーンに日本の著名人も賛同。女優の大島優子やお笑い芸人・渡辺直美、モデルの水原希子も抗議の投稿をした。テニスの大坂なおみや野球の大谷翔平など、スポーツ界にも活動は広がっている。

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 現在、デモは140都市以上に拡大。40都市以上で夜間外出禁止令が出るほか、28州とワシントンで州兵が動員。6州、13都市で緊急事態宣言が出されている。ここまで拡大した背景には、経済の不満も関係していると言われ、アメリカの4月の失業者数は2050万人にもなり、失業率14.7%は1930年代の世界恐慌以降、最悪の水準だ。

 慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、この抗議デモ、経済への不満と、新型コロナウイルス感染拡大の関連について着目した。「今回のコロナの件をきっかけに、日常から溜まっていた不満があったのだろう。今、生活が苦しいだけではなくて、未来の展望が断たれた時に、希望が見えず絶望した気持ちになっている人がいる」と説明した。

 アメリカンドリームと言われるように、アメリカは平常時であれば、大きなチャンスが得られる国と言われている。若い才能、新たなビジネスに多額の金が集まるため、世界中から有能な若者が集まり、また新陳代謝も激しい。その一方で「ピンチの人たちにも自己責任が求められるのが文化」と、弱者に対しても容赦はない。

 逆に日本は、若い人々にすぐチャンスが来るかと言われれば「年功序列だったり、順番待ちが必要だったりする」。すぐに成果が出しづらく、また出してもすぐに評価がつながらないということに不満を持つ人もいるが「こういう危機に陥った時は、不遇な人たちも支えていこう、となった」と、日本らしさがプラスに働くこともある。

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 若新氏は、日本の人々の動きに素直に感心している。「ここ数年ネットでは『自己責任論』が盛り上がっていたのに、今回のコロナ禍でその自己責任という言葉が全然広まらなかったのがびっくりだった。緊急事態宣言でも、個人の行動が制限できないにも関わらず、みんな自主的にやろうという気持ちが盛り上がったのは、どこかで国が見捨てない、社会が見捨てないんじゃないかという希望があった気がする」と、自暴自棄にならない状況があったのではないかと分析した。

 勝者と敗者がくっきりと分かれ、それゆえに経済格差も大きいと言われるアメリカ。「頑張る人はチャンスが掴み取れるし、才能や能力がある人はどんどん年齢や順番に関係なく勝ち取っていく。勝者には優しい」が、その反面「負けてしまったり、力が足りなかった時に、『それは自己責任だ』『自分でなんとかしなさい』と、突き放すようなところがあることをすごく強く感じた。きちんと人々の暮らしの末端にまで目を届けていない。自己責任も限界があるし、だから不満爆発につながったのではないか、と思います」と、抗議デモへのつながりについて指摘した。

ABEMA/『けやきヒルズ』より)

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