白人の警察官が黒人男性を死亡させた事件をきっかけに始まった人種差別を訴える抗議のデモが、ついに全米50州すべてに拡大した。沈静化の兆しが見えない中、司法当局は白人の警察官について、「殺意があった」と認定し、より重い第二級の殺人罪に切り替えて訴追した他、現場にいた3人についても犯行を手助けしたとして訴追した。
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デモはアメリカ国外にも拡がっている。ロンドン中心部では外出制限の中、「警察による黒人への暴行が問題になっているのはアメリカだけではない。イギリスでも起きている」と声を上げ、ジョンソン首相も「フロイドさんの死は言い訳できない。人々の抗議は完全に理解できる」と言及した。
一方、一部が暴徒化し警察と衝突するなど、これまで約1万人もの逮捕者が出る事態となっている。オバマ前大統領は「暴徒化するのは一握りだ」「全米の若者が変化を起こそうと行動し立ち向かった彼らにありがとうと言わなければならない」との考えを示している。
ニューヨーク在住で、抗議デモの様子を撮影してYouTubeなどで発信しているライターのYUKAKO氏は「白人警察によって殺された黒人の方は今までもたくさんいた。そういうものもあって、コロナ禍での自粛疲れなどもあって、一気に爆発したのではないかと思っている。当初、現地メディアもプロテスターと呼ばれる抗議活動参加者の一部が夜に暴徒化していると報じていたが、ルールを守って平和的にデモを行っているプロテスターと、夜に破壊行為、略奪行為を行う、ルーターは別物なのだと変わってきている」と話す。
「“#Black Lives Matter”、“黒人の命も大切だ”というスローガンも今回生まれたわけではなく、2013年頃からずっと使われてきた。何人かインタビューして印象に残っているのは、“先祖代々、差別を受けてきた。若い世代や自分の子どもにまでそれが残ってしまうことを心配している。だから今立ち上がって、今こそ差別をなくしたい”という力強いメッセ―ジだった。一時、コロナ禍でアジア人へのヘイトクライムが増えていると言われていたが、アメリカに住んでいる方なら一度は見たり、体験したりしたことがあると思う。経済が悪化して人々の心も荒んでいく中で、“差別”というキーワードは増えてきた気がしていた」。
東洋経済編集長の山田俊浩氏は「黒人の家庭は平均的に観て資産、あるいは収入が少なく、それが受け継がれてしまっている。1960年代の公民権運動の時代から、職業や収入、教育の格差をなくそうという運動は続けているが、むしろ白人も含めて格差は拡大していて、貧困に喘いでいる人が増えてしまっている。人種の問題だけではなく、貧富の格差の問題も人々の心を揺さぶり、デモの要因になっていると思う」と指摘。
エッセイストの小島慶子氏は「デモの参加した人のインタビューでも、略奪や暴力行為をしている人たちに対して、それはおかしいと言っていた。こういった映像を見て“黒人は暴れる人なのか”と思ってしまうこと自体が人種差別を生んでしまう。それは注意する点だ」との考えを示した上で、日本には人種差別が無くて良かったと思う人がいるかもしれないが、外国の方、異なる人種の人はいる。差別しているつもりがなくても、肌の色のことを言ってしまったり、見た目や先入観でものを言ったりした時に、言われた側が差別されたと感じることはある。私はオーストラリアに住んでいるが、アジア人が少ない地域では、すぐにコロナウイルスを持っている中国人だと全く悪気なく決めつけてしまう人も中にはいる。“アジア人はコロナ”という感覚で言われたらショックを受けるだろう。このように、人種差別は苛烈な暴力やひどい差別だけではなく、自分と違う人に対して無意識にしてしまうことの積み重ねによっても追い詰めてしまうということを、日本にいる人も知っておいた方がいいと思う」と警鐘を鳴らした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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