YouTubeを使ってアピール?存在感を増す与正氏…北朝鮮の最新情勢は
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 拉致被害者・横田めぐみさんの父・滋さんの葬儀が営まれた8日、北朝鮮の『労働新聞』には久しぶりに金正恩委員長の姿が掲載された。一時は重篤説が浮上していた金委員長だが、同紙によれば朝鮮労働党幹部の会議に出席して市民生活の向上や肥料などの化学工業の重点的発展を指示、「自立した経済」を強調したのだという。

・【映像】礒﨑敦仁准教授による北朝鮮情勢の解説

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 世界中が新型コロナウイルスの感染に苦しむ中、“感染者ゼロ”を主張してきた北朝鮮。中国との国境が封鎖されていれば、経済や食料事情は悪化しているはずだが、対外発信を見てみると、そんな様子は伺えない。実際、最近公開されたYouTube動画を見ると、スーパーにはたくさんの食料品が並び、空気清浄機のある部屋でピアノを弾く女の子が「いつになったら学校に行けるの?」と尋ねると、父親と見られる男性が「コロナウイルスをやっつけるワクチンが開発されたらだ」と話す様子も。

 北朝鮮の政治を専門としている慶応義塾大学の礒﨑敦仁准教授はこうした動画について「北朝鮮の一般の人々の多くはインターネットが何ものなのかということも分かっていない。体制宣伝の一環として考えていいだろう。また、言語が朝鮮語だけでなく英語なのは、日本も始め、他国に関心を持ってもらうことが重要だからだ」との見方を示す。

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 昨年、一昨年と平壌を訪問したジャーナリストの堀潤氏は「一昨年の夏、平壌でテドンガンというビールが売り切れたといい、そのことについて政府の要人たちは“所得が上がってきたということだ”と言っていた。また、核開発が終わったので、これからそのお金を平壌や地方の経済発展に振り向けたいということも言っていた。また、人々も“とにかく国連の制裁で物が入ってこない。だが、それが終われば我々はビジネスができる。すでにヨーロッパや中国からの申し出はたくさんある”と言っていた。平壌と地方の格差というのは絶対的なので、映像に出てきたのは超エリートの家庭だろう。それでも国民が経済発展の恩恵を一度味わってしまうと、もう止められない」と話す。

■与正氏が存在感を増している?

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 他方、一時は関係が改善したとみられていた韓国への強硬姿勢も目立つ。

 韓国の脱北者団体が金委員長を批判するビラを撒いたことへの対抗措置として、妹の金与正氏が南北共同連絡事務所の撤廃を通告。さらに南北軍事合意の破棄も覚悟すべきだと圧力をかけているというまた、9日には、韓国との連絡ルートを遮断することも明らかにしている。

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 礒﨑氏は「実は2年前の南北首脳会談で、ビラ撒きのような敵対行為を止めることで合意している。しかし韓国がその後も法的な措置を取らなかった。そのことへの不満が噴出したということだ。ただ、今までと批判の仕方が全く違う。3月にも同じような不満を吐露してはいたが、あくまでも韓国向けで、北朝鮮国内には知らせていなかった。しかし今回の金与正談話は『労働新聞』にも掲載されている。4月の総選挙に大勝し、任期を2年も残している文在寅政権に対する、“きちんとやれ”というメッセージでもある。アメリカを説得するくらいの自主外交をしろということを強く出してきたということだ」と説明。

 また、与正氏が存在感を増しているように見えることについては「今回、朝鮮労働党の統一戦線部第一副部長という肩書きが判明した。これは対韓国政策を担う実務の責任者だ。だからこそ韓国に対する不満を金委員長ではなく、金与正氏の名前で言ったということだ。また、メッセージというのは相手に伝わらなければならないので、これだけ強い不満を持っているということが韓国の政府や韓国の人々に伝わるよう、誰でも知っている金与正氏を出してきたともいえる」とした。

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 横田滋さんの訃報によって、再び拉致問題にも注目が集まっている。

 礒崎氏は「基本的には金正恩政権は連続性の強い体制なので、金正日政権から政策を大きく変えているわけではない。その一方で、日本側の政権は変わっていると言える。小泉総理が平壌に乗り込み、対話という名の交渉、談判によって5人の被害者とその家族を取り返したが、それ以降、首脳会談は開催されていないということもある。拉致問題の解決が至上命題なのだとすれば、きちんとロードマップを作り、それを動かさずにやっていかなければならない。安倍総理は昨年5月、金正恩委員長と無条件で向き合う首脳会談の意向を示したが、そこから進んでいない。確かに北朝鮮は頑なで、トランプ大統領ですら政策を変えさせるのは非常に難しい。それでも日本が外交として目標を定めたのであれば、きちんと進めるべきだと思う」と話した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:礒﨑敦仁准教授による北朝鮮情勢の解説

北朝鮮 韓国との全通信ライン遮断 金与正氏ら指示
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北朝鮮が南北連絡事務所の撤廃表明 韓国を批判
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