「政府の説明はそもそも間違っている」公文書管理をめぐる変化が逆戻り?専門家会議の議事録問題の背景は
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 3月、新型コロナウイルスの感染拡大を「歴史的緊急事態」と位置付けた政府。これにより、後世に記録を残す意味からも記録管理が徹底されるはずだった。しかし、それから何度も行われた専門家会議に関して、政府は「議事概要」と資料は作成・公表しているものの、委員の発言すべてを記録する「議事録」の作成は行っていなかったことが明らかになった。

・映像:「政府には議事録を作る義務がある」政府の文書管理のあり方を問う 

 その理由について、西村担当大臣は先月29日、「自由に率直に議論していただくとういう観点から、発言者が特定されない形で議事概要を作成するということにしている」と説明していた。

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 しかし立憲民主党の蓮舫副代表は「ありえない。論点が誰から提案され、それに対して誰がどのように反論あるいは同調し、残すのか外すのかという議論が残っているのが議事録だ」と指摘。こうした批判を受け、西村担当大臣は7日、「今後開かれる会議以降の議事概要については、発言者名を明記することとした」と発表した。

 そもそも、政府における「議事録」「議事概要」とはどのようなものを指すのだろうか。公文書管理や情報公開の研究・実践に取り組むNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長に話を聞いた。

■「政府の説明はそもそも間違っている」

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 菅官房長官は民主党政権が東日本大震災や福島第一原発事故に対処していた2012年1月、自身のブログで「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録はその最も基本となる資料だ。それを作成していなかったのは、明らかな法律違反であるとともに、国民への背信行為だ」と記している。

 ジャーナリストの堀潤氏は「官邸で避難計画の策定に携わった経産省の高級官僚の方にオフレコで話を聞いたことがある。“総理、これは公文書として記録に残しますよね?”と確認すると、“これは生々しすぎるから残せない”と言われたという。大事なものだからと省内で個人的に保管していたそうだが、残念ながら段ボール箱ごと、何も知らない部下が廃棄されてしまったという。安倍政権下でも民主党政権下でも、表に出すか出さないかという判断がその時々に決められてしまうというのは、仕組みとして見直さなければダメだと思う」と話す。

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 三木氏は「公文書管理をめぐっては、行政機関の現場レベルが必要だと思う範囲で作ればいいというルールにしてきた結果、審議会や懇談会や専門家会議などの議事録の作り方がバラバラだったし、2、3枚の本当に簡単な記録の公表をもって情報公開はおしまい、ということが続いてきた。そして東日本大震災、原発事故の時の議事録未作成という問題を受けて公文書管理法ができた。その結果、公開するかどうか、会議の参加者がどう思うかは別にして、政府には専門家会議の発言者と発言内容が分かる議事の記録、いわゆる議事録を作ることが義務づけられている。つまり、政策の決定や了解を行わないから議事録を作らなくていいという政府の説明はそもそも間違っているし、この10年くらいの間に起こった変化が先祖返りしてしまっている」と説明する。

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 「一方、実は議事概要についての明確な定義はなく、政府の中には誰が言ったのかということも含めた議事録に近い議事概要から、誰が言ったのかが分からない非常に簡単なものまで、色々なパターンの議事概要がある。しかしガイドラインでは歴史的緊急事態に該当する場合、通常よりもしっかり記録を残しましょうということになっている。今回の専門家会議は1回につきて1時間半から2時間くらいやっているが、議事概要はかなり簡略されていて、3~5枚程度。政府がスクリーニングした内容だけが、誰が言ったのかが分からない形でまとまっているというものになっている。基本的には議事録や議事概要は録音したものから作成するので、今回も録音はあるはずだ」。

■「専門家を守る仕組みを作るべきだ」

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 堀氏は「厚生労働省の少子化対策ワーキンググループに参加したことがある。政策決定に関わるものではなく、ヒアリングの場だったが、議事録として公開する前に、“ここはちょっとやめておきたい”“ここは言い間違えなので修正したい”という、出版でいう“赤入れ”みたいな作業をしてから公開した」と振り返る。

 三木氏は「緊張感なくリラックスして自由な発想で発言してもらいましょうということは当然あるし、会議の場を公開にしたり生中継にしたりすることで非公開にしなければならない情報は一切しゃべれないということもある。また、内容によっては全てを公開できるかどうかの判断もしていいというのが情報公開法の仕組みだ。しかし前提として政府が記録もきちんと作り、公開もしていくという姿勢でいてくれなければ、私たちが議論をする手掛かりすらない状態になってしまう」と指摘。

 加えて「議事録を作るか作らないかでこんなに引っ張っていること自体がちょっと変だ。専門家会議の議事録だけを見て全てが分かる、根拠になるデータも分かるという状態には少なくともなっていないので、専門家会議の運営の仕方や、出してくるデータや関連資料の公開の仕方についての議論に移った方が得るものは多いのではないか」と指摘した。

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 司会の平石直之アナウンサーは「全てが文字起こしされたものを使って揚げ足取りしようということではないし、全てを残せとも言っていない。“思わず熱くなったから、そこは消しといて”ということだってあるはずだ。専門家会議が開かれる度、政府関係者から漏れたり、出席者が喋ったりすることで、“ある委員はこう言った、別の委員は言った”ということが新聞に出る。しかしどのような議論が戦わされた結果、このようにまとまっていった、という過程がわからないままで良いのだろうか」、スローニュース代表の瀬尾傑氏は「記録を残して意思決定の流れを後世に残すことが極めて大事だ。公文書管理の問題に力を入れたのは自民党政権の福田康夫総理だったし、その流れを逆の方向に戻すのはやめてほしい。そして、専門家会議がかわいそうだ。メンバーはそれぞれの分野の専門家としての提言をするために参加しているのであって、政治的決定をしているわけではない。しかし西村大臣の発言をはじめ、政治家たちが専門家たちに責任を押し付けているように見える。だからメンバーたちが矢面に立たされて喋らざるを得なくなり、叩かれてしまうこともある。政治家や官僚は専門家を守る仕組みを作るべきだ」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:「政府には議事録を作る義務がある」政府の文書管理のあり方を問う 

「政府には議事録を取る義務がある」政府の文書管理のあり方を問う
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