プロレスリング・ノアの頂点GHCヘビー級王座を持つ潮崎豪は、齋藤彰俊を「運命の相手」だと言う。齋藤の挑戦表明を受け、両者は6月14日の無観客配信大会で対戦することになった。
6月14日は11年前に潮崎が初めてGHCヘビー級王座を戴冠した日であり、また三沢光晴さんの命日でもある。三沢さん最後の試合で組んだタッグパートナーが潮崎であり、闘った最後の相手が齋藤だった。チャンピオンが潮崎だからこそ、いま挑戦するのだと齋藤。潮崎にも異論はない。
「6月に齋藤彰俊とやるということで、この2人にしかない物語がある。この2人にしかできない闘いがある。そう思ってます。ノアを思ってくれる人たちには“(この試合を)やらなきゃいけないだろう”という気持ちもあるはず」
単純に挑戦者、対戦相手としても、斉藤のことを高く評価している。
「タッグリーグでの対戦で負けてますから。齋藤彰俊の強さ、恐さ、闘いにかける気持ちを感じましたし、存在すべてがあの試合に出てましたね。今のノアは新しい選手、若い選手が出てきてますけど、(齋藤は)これぞノアという闘いができる選手の一人。強さ、恐さを充分に持っている相手。自分の力が出し切れる相手だし、出し切らないと勝てない相手。闘いの重みを感じてもらいたいです」
大事な日に行なわれる、大事な相手とのタイトルマッチ。これまでと違うのは、無観客の配信マッチであることだ。現在の状況に、潮崎は“使命感”を持っていると言った。
「無観客に慣れるってことはなかなかないけど、画面の向こうで見てくれてる人がいるということを自分は信じてますので。最初は大丈夫かな、どうなるんだろうっていう不安もあったんですけど、見てくれてる人を俺は信じてるんで。映像で一つ一つ細かいところまで見てくれてると思う。自分が常々思っているのは、プロレスを見て立ち上がる姿、向かっていく気持ちを伝えていければいいなと。今こうして(配信という形で)プロレスを届ける状況があるということに感謝してますし、届けなくちゃいけないという使命感もある」
立ち上がる姿、向かっていく姿で人々を鼓舞する。そんな使命を持つ者として、日本プロレスの祖である力道山のことも考えるそうだ。力道山が街頭テレビを通じて敗戦に打ちひしがれる国民を勇気づけたように、今はネットを通しての試合で何かを感じさせたい。
「ノアが、プロレスが、日本を、そして世界を盛り上げることができればいいなと思ってます」
潮崎豪vs齋藤彰俊という特別なカード。「昔ノアを見ていた人にも届けたい」という思いもある。
「そういう闘いをしないと意味がない。他の選手にはできない闘いを見せたいです。6月に防衛戦。相手は齋藤彰俊。この人しかいないという存在。ノアの強さ、ノアの凄さ、プロレスの凄さ。見てる人たちに届けたいですね」
今年1月、ベルトを奪取すると、潮崎は「I am NOAH!」と叫んだ。これが現在の決め台詞になっている。加えて今回は、勝って「We are NOAH!」とみんなで叫びたいとも。今この時期、ノアのトップとして特別な相手と何を見せるべきか。王者は充分に理解している。
文/橋本宗洋