日本プロレス界最大のスター選手の一人、三沢光晴が世を去って11年になる。ノアファンにとって、6月というのは特別な時期だ。
そんな6月に、ノアは無観客大会をネットで配信する。14日の夜7時。メインイベントは潮崎豪vs齋藤彰俊のGHCヘビー級選手権試合だ。6月14日は三沢の命日の翌日であり、11年前に潮崎が初戴冠を果たした日。三沢と最後にタッグを組んだ潮崎と、三沢と最後に闘った齋藤の対戦。チャンピオンが潮崎だったからこそ挑戦表明したと齋藤は言う。
【視聴予約】14日19時から放送「NOAH ”GOFORWARD Day1”」
大会に向け、三沢ゆかりの川田利明にインタビューを行った。高校時代から三沢をよく知る川田に「もし今、三沢さんが生きていたらコロナ禍の中でどんなアクションをしていたと思いますか」と質問してみた。川田の答えは、長く近くにいた人間ならではのものだった。
「(三沢は)どんなことに対してもリスクとかそういうことを考えない人だったので。“いいよ、やっちゃえば”という感じの人だった。俺はまったく逆の性格なんですけどね。今だったら“関係ねえよ”っていって飲み屋で飲んでるんじゃないかなと。そういう人ですよね。今の世の中で生きてたら、毎日ワイドショー独占じゃないかなって」
メインで対戦する潮崎と齋藤とは、対戦経験もある。
「逆水平チョップをやる人はたくさんいるけど、潮崎選手の逆水平が一番痛かった。齋藤選手は武道館でもらったバックドロップ。首が折れるんじゃないかと思いましたね。次の日から動けなかった」
実力者2人の対戦。しかしそれは「難しいものになる」と川田は語った。普段との一番の違いは、やはり無観客試合であることだ。
「無観客でやるわけだからテンション上げるのも難しいですよ。まして三沢さんの存在が背景にあったらより難しい。そこでどういうものを見せるか。ノア自体の風景も最近、変わってますよね。ただ、2人がやってきたことを見せれば、みんな納得してくれると思います。ここで新しいものを見せるというのは合わないでしょう」
この大会では、齋藤と同じ反選手会同盟の井上雅央も中嶋勝彦が持つGHCナショナル王座に挑む。ベテラン2人の挑戦に感情移入するファンも多いだろう。
「それがプロレスの独特なところで。いろんなものを駆使すれば(ベテランが若い選手と)対等に闘えるのがプロレスのよさ。それにはふだんの努力が大切ですけどね。プロレスは、できるうちはやっておいたほうがいいです。引退しても帰ってくるくらいだったら細々とでも続けたほうがいい。この世界、引退ビジネスやる人が多いですから。引退ビジネスって、悪く言えば詐欺ですからね」
齋藤と井上はリングに立ち続けることで、ベルトに挑む権利を得たのだ。長いキャリアの中で培ったテクニック、あるいは覚悟。そのすべてを大一番で見たい。川田曰く「雅央に関しては何をやっても中途半端なところも含めて彼の個性、よさなんじゃないですか」。どんなご時勢であれ、彼らが個性を総動員した闘いを見せてくれれば、ファンは満足するはずだ。
文/橋本宗洋