年間数兆円が動くという米ラスベガスも新型コロナウイルスには勝てず、3月中旬からは440カ所のカジノ全てが閉鎖。翌月の失業率は全米最悪の28%を記録した。そんなコロナ禍で、海外ではオンラインカジノが人気を集めているという。
・【映像】コロナ渦で急拡大中の"オンラインカジノ" その実態と違法性の有無は?
こうしたオンラインカジノについて、警察庁は「違法行為で、刑法の賭博罪を使っての立件は可能」との見解を示しているが、コールグリーン法律事務所代表でプロ雀士でもある津田岳宏弁護士は「海外でライセンスを取得しているオンラインカジノに関しては、基本的には処罰に値する違法性はないというのが私の考えだ」と話す。
2016年、海外で合法となっているオンラインカジノを利用した複数の日本人が賭博容疑で逮捕された。ほとんどの人は略式起訴されて罰金刑になったが、1人だけは争う意向を示し、翌年、不起訴処分を勝ち取った。その時の弁護を担当したのが津田弁護士だ。
「オンラインカジノで儲けて捕まった人はいるが、ほとんどの人は争わずに罰金を払う。警察と長期間やり合うよりは、20万ぐらいの罰金を払って、交通違反みたいな感じで終わらせてしまうことを選ぶということだ。しかし1人だけ、ある種の“勇者”がいたということだ。当初は微妙な事件かなと思ったが、結果として不起訴になった。他に例がないという意味では、重いものだと思っている。大きなポイントは、オンラインカジノが海外で合法的なライセンスを取得していたことだった。賭博罪というのは、基本的には胴元、運営者を処罰するための法律で、海外で合法的なライセンスを取っている場合、処罰することができない。それなのにお客さんだけを処罰するというのは本末転倒という言葉が一番当てはまる場面で、刑法が想定していない。私もそのような意見書を書いたし、そのことが理由で起訴にはならなかったのではないか。もう一つ大事なのは、日本の刑法は明治時代に作られたものなので、日本にいながら今すぐに海外のカジノにアクセスできるツールというのは、明治の人からすれば“どこでもドア”みたいなもので、ネットで賭博をするということは想定していないし、罪刑法定主義の観点から処罰するというのはおかしいと私は主張した」。
一方、オンラインカジノについては摘発の難しさを指摘する声もある。警察当局関係者によると、個人が海外のオンラインカジノにアクセスして遊ぶことも賭博罪にあたるため、情報があれば摘発もするが、「糸口を掴むのが難しく、立件価値がどれほどあるか不明」「多額であれば検挙もあるが情報は入ってこない」「目の前に見える顧客がいる店舗型が優先」というのが現実のようだ。
津田弁護士は「そもそも賭博罪自体は場所がどこなのかが問題なので、国外は全くノータッチだ。だから少なくともマカオで日本人がカジノをやるのはOKだし、投資するのもOKだ。ただ、警察に聞くと、違法になる可能性はあるという答えをしてくる。それは風紀に対する罪なので、日本の反社会的勢力が絡んでいることが判明すれば、日本国民のためにもなるということで警察は捜査をするということだ。オンラインカジノについては、たとえば中国語、英語、ヨーロッパの言葉などに対応しているようであれば、全世界的に展開している可能性が高く、基本的には日本の反社会的勢力は絡んでいないと思う。また、オンラインカジノは口座記録などが残ってしまうので、警察がその気になって捜査をすればバレないということはない。これがほぼ現行犯でなければ証拠は残らないリアルの賭博と少し違う。やはり黒川さんのマージャンもそうだが、賭博罪に明確な基準はなく、“曖昧の塊”だ」とした。
一晩で1~2万円をやり取りしたという東京高等検察庁の黒川弘務前検事長と記者たちの賭けマージャンをめぐる問題では、先月22日に衆議院法務委員会で川原隆司・法務省刑事局長が「もちろん(賭け麻雀は)許されるものではないが社会の実情をみたところ必ずしも高額とは言えない」と答弁したことから、いわゆる“テンピン(1000点=100円)”のレートが合法になった、“黒川基準”との見方もある。
津田弁護士は「これも賭博罪の一つのポイントだが、公然性という問題がある。黒川さんのように、すっぱ抜かれなかったら分からなかったくらいに、こっそりとやる賭け麻雀と、インターネット上で公然とやる賭け麻雀では違う。ここも曖昧、塩梅な部分だが、こっそりと非公然にやる分には、そんなに処罰しなくてもいいということを、50年ぐらい前の検察官が書いた本にも書いてある。だから警察も全ての賭けマージャンを摘発していたわけではない。しかし、インターネットで大々的にやるというのは良くないし、“掛けマージャンは誰でもしてもいいぞ、やり放題だ”となると、それはそれでまずい。また、“黒川基準”という言葉は私もいろいろなところから聞いているが、曖昧だったところに、ピンというレートに対して、法務省刑事局長という立場の人がかなり具体性のあるコメントをしたということで業界では話題になっている。こういう事をはっきり言うことは今までなかった」と話していた。
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