「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」が6月28日に開幕する。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、今期は1回戦の4対局が公開対局ではなく、都内スタジオで行われることになったが、トップ棋士12人が集い、繰り広げる熱戦は例年通りだ。今年で41回目を数える歴史ある棋戦だが、過去に3連覇は1度だけ。タイトル戦でも活躍、3つのタイトルを保持する渡辺明JT杯覇者(棋王、王将、棋聖、36)が、史上2人目の偉業達成を狙う。
▶中継:2020年度「将棋日本シリーズ」 1回戦第1局 羽生善治九段 対 久保利明九段 6/28(日)15:00~
棋聖戦では若き天才・藤井聡太七段(17)の挑戦を受け、名人戦では初の獲得を目指して豊島将之名人(竜王、30)と戦う。自粛期間が明けた後、一気に組まれた対局による多忙さは、将棋界でも1、2を争う。それでも公式戦が長期間延期になった間は「大掃除など、普段やらないことをして過ごしていました。外食をしない分、ダイエットがはかどって、体を絞ることが出来たのは好材料です」と、ハードスケジュールに耐えうる体作りに成功した。
現在、最多のタイトル3つを保持することから“現役最強”と呼ばれることもあるが、JT杯は「出場している棋士が『トップ棋士』だと定義付けできる、格式が高い大会だと思います」という。前年覇者、タイトル保持者、賞金ランキング上位者。経験や過去の実績ではなく、今活躍している棋士が集う場所。そんな認識だ。
持ち時間10分、切れたら1手30秒未満、考慮時間各5分という早指しについては「公式戦では最も持ち時間が短いので、それに合った戦略が求められます」。瞬時の決断力がなければ、大会連覇など達成できない。これまでトップ棋士として走り続けてきたからこそ、豊富な出場歴もあり、このルールへの対応は身につけている。
新型コロナから徐々に日常が戻りつつある。「将棋は娯楽産業なので、世の中が平和であって初めて成り立つということを改めて感じました。平常に戻るまではまだまだ時間が掛かりますが、皆さんが心から将棋を楽しめる日が来ることを願っています」と、棋士として将棋ができること、楽しむことのありがたさを実感した。最大のパフォーマンスを発揮して、目指すは史上2度目の3連覇。30代半ばにして、最盛期とも言える活躍を見せる渡辺JT杯覇者であれば、クリアしても不思議ではない記録だ。
(写真提供:日本将棋連盟)