プロレスリング・ノア無観客大会は、2週連続でのタイトルマッチ配信となった。6月14日に配信された大会で、中嶋勝彦は保持するGHCナショナル王座を初防衛。試合後に挑戦者決定トーナメントの開催を提案した。
このナショナル王座はヘビー級、ジュニアヘビー級どちらの選手にも挑戦資格がある無差別級タイトル。トーナメントも両階級から14選手がエントリーする大激戦となった。このトーナメントを制したのは、春からノア参戦を果たした征矢学。人気ユニット・金剛で活躍しているが、ノアで存在感を増すためにはベルトも不可欠だ。
征矢は1日4試合という過酷な闘いを制すと「もう文句ねえな」と王者・中嶋に対峙。21日配信のタイトルマッチに臨んだ。ここでも征矢は荒々しいファイトを全開に。「弾道」と名付けたラリアットを隙あらば叩き込み、ペースを握っていく。対するチャンピオンは得意の蹴り。リングアウトまでギリギリのところでの場外戦など、試合運びのうまさも見せた。
征矢のチョップと中嶋のミドルキックの打ち合いは圧巻。皮膚を裂き、骨にまで届くような鋭い音が響き渡ると、実況陣も言葉を発することをやめ、その音をファンに届けた。
終盤の大技ラッシュでは、征矢がデスバレーボムにパッケージドライバー。中嶋はフランケンシュタイナーで征矢をマットに突き刺し、奥の手のダイヤモンドボムも繰り出す。そこから強烈な顔面蹴り、フィニッシュのヴァーティカルスパイクと、非情とも言うべき顔面・頭部への攻撃を続けていった。そうしなければ勝てないということだろう。挑戦者・征矢の執念は凄まじいものだった。
2度目の防衛に成功した中嶋は、征矢を「熱い男だね。火傷するくらい」と評価。またトーナメントに参戦した全選手に向けて「おかげで刺激的な夜になったよ」と感謝の言葉を述べている。
ナショナル王座は昨年できたばかり。中嶋は第2代王者だ。そのためベルトを守るだけでなく、特色を打ち出し、育てていくことも重視しているという。通常のプロレスルール以外にも意欲があるというから、今後の防衛ロードも楽しみ。唯一、厳しい部分があるとすれば、中嶋の充実ぶりゆえになかなか挑戦者が見当たらないことではないか。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア