“一斉自粛”は必要だったのか 「緊急事態宣言」を検証、第二波・三波にどう備えるべき? 京大・宮沢孝幸准教授に聞く
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 緊急事態宣言解除からまもなく1カ月。12日に、大阪府の専門家会議では、自粛や緊急事態宣言などの対策にどれくらい効果があったのか、その検証が行われた。

・【映像】吉村知事が思わず絶句 緊急事態宣言後の自粛はやりすぎだった!? ウイルス学 宮沢准教授と考える"第2波"への備え

 吉村知事の「ピークアウトするのに、外への自粛は影響があったのかなかったのか」との問いに対して飛び出したのは、大阪大学核物理研究センターの中野貴志教授による「データを見る限りは関係なかったと思う」との見解だった。重ねて吉村知事が「その後の緊急事態宣言も営業の自粛も効果がなかったということか」と尋ねると、中野氏は「なかったと思う」と回答した。

 大阪では緊急事態宣言が出される前の3月末事典で、すでに感染は収束に向かっており、自粛の効果は限定的だったという指摘に、吉村知事は思わず天井を見上げて言葉を失った。

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 この専門家会議にオブザーバーとして参加した京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授(ウイルス学)も、直近1週間における累積患者数の増加の割合を示す指標「K値」に着目、緊急事態宣言発令に伴う自粛要請は不要だった可能性を指摘する。

 このK値を1日ごとにプロットしたグラフが下降線を描き、その傾きが急であるほど収束のスピードが早いということになるが、これを国際比較してみると、ドイツやフランスではロックダウン後にグラフのきが急になっているのに対し、日本では最初から最後まで変化が起きていないことが読み取れるのだ。

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 「この結果を見てびっくりしたし、朗報だと思った。見事な一直線で、間隔もほぼ同じ。理論値通りに値が落ちている。専門家会議の資料に出てきたグラフを見ても、3月15日以降、4月上旬までの期間についても、直線的な下降線になっていた。3月20日頃のお花見のシーズンに随分緩んだような印象があるかもしれないが、その影響も出ていない。つまり、2月くらいから皆さんがかなり警戒されていて、自粛も始まっていたが、あの頃以上の自粛は必要ではなかったという可能性が出てきてしまったということだ。K値が完全に信用できるものとは限らないが、西浦進教授によるRt(実効再生産数)を使ったグラフよりも未来を予測しやすい。最初の立ち上がりから1週間くらいの推移を見れば、ある程度の将来が見えてしまうので、それを見ながら急ブレーキをかける政策決定をしてもいいのではないかと考えている」。

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 一方、4月7日時点で緊急事態宣言を発令したことは、やむを得なかったとも話す。「あの頃は感染者数がどんどん増えていた時期でもあり、皆さんが焦っていた。我々もビビっていた。3月27日にはピークアウトしていたが、Rt(実効再生産数)は3月下旬まであまり下がっていなかったし、確信が持てるようになったのはゴールデンウイーク頃だ。やはり4月上旬の段階ではやむを得ない判断だったと思う」。

 その上で宮沢准教授は「もちろん自然免疫が上がっていて抑えられたというような、様々なファクターが考えられるし、ウイルスも変異するので、次ぎも同じかと言われると、そうとは言えない。ただ、山中伸弥教授が“ファクターX”と呼んでいるものだが、明らかに欧米人とは違う挙動を示しているので、我々には何らかの理由でこのウイルスに抵抗性があるということはいえる。逆に言えば、欧米の活動自粛の基準に従わなくても、独自路線でコントロールできるということが分かったということなので、この点は利用すべきだと思う」とした。

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 そんな宮沢准教授は、かねてから「ウイルス100分の1作戦」を提唱してきた。「猫の病原性コロナウイルスでは約1万個の感染性ウイルスが必要なので、感染者から体内に入るウイルスを100分の1にすれば感染はほぼ防げる」という考え方だ。

 「たくさんのウイルスでなければ、我々の自然免疫などのブロック機能を突破することはできない。そこで、完全にウイルスをなくすという発想ではなく、100分の1くらいにして、彼らが手も足も出ないようにするという発想だ。もちろん例外はあるが、人々にゼロリスクを求めすぎる傾向があると思う。狂牛病の時も、1人を守るために精肉店や焼肉店がバタバタと潰れてしまうことになった。そういう国民の意識が変わってくれないと、政治家も人気取りの方にどうしても行ってしまうと思う」。

 カンニング竹山が「メディアも冷静さを失っていたと思う。緊急事態宣言についてはもう終わってしまったことではあるが、もし第二波が来た時に、また同じことをやるのかどうかだ。今までのことを学んで違う方法を取れば、経済的な活動を続けることもできるかもしれない」と話すと、宮沢准教授は「大変言いにくいことだが、やはり医者の側に立ってみれば、1人の命を助けるというのが最優先されるし、ああいう提言が出てきてしまうのはしょうがない。しかしウイルス学的に、マクロ的に見ると、もっと違う提言もできたし、経済の面で見ればまた違う提言もできたはずだ。それらを全体から俯瞰してまとめられる人が欲しかった。ただ、首相には専門的知識は乏しいので、より専門家に近い人で、大所高所から見られる人が上に立てばよかったのではないか。私は尾身さんがそういう立場になるべきだったような気もするが、尾身さんを非難することはできない」と話していた(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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吉村知事が思わず絶句 緊急事態宣言後の自粛はやりすぎだった!? ウイルス学 宮沢准教授と考える"第2波"への備え
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