“西の王子”とも呼ばれるイケメン棋士が、さらに力をつけて夢舞台に戻ってきた。 6月28日から開幕する「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」に、斎藤慎太郎八段(27)は2年連続で出場。昨期は王座のタイトルホルダーとして初出場を遂げたが、今期は賞金ランキング10位での出場。初の順位戦A級入りを決め、段位も1つ上げて八段になった。「出場資格が一番厳しい、特別な棋戦という印象です」という選ばれし12人の戦いに、穏やかな性格の持ち主も、自然と気持ちが引き締まる。
▶中継:2020年度「将棋日本シリーズ」 1回戦第1局 羽生善治九段 対 久保利明九段
各棋戦、参加条件は異なるが、JT杯は現在活躍している棋士が「前年優勝者」「タイトルホルダー」「賞金ランキング上位者」という分かりやすい基準で選ばれる。出場している時点で、現将棋界の中心人物の一人としてカウントしても間違いない。「出場資格が一番厳しい」と言ったのも、この棋戦においては前年優勝する以外、他の棋戦で活躍しないと参加資格が得られないからだ。
持ち時間各10分、切れたら1手30秒未満、考慮時間各5分という「最短の公式戦」でありながら、ファンの前で戦う公開対局であり、また早指し戦でありながら、途中に「封じ手」が入る独特な戦いだ。「早指しの中での封じ手は、休んだり考えたりできる唯一のまとまった時間になります。以後はノンストップですので、これをうまく活用できるかポイントになるかもしれません。来場された方も一緒にその場で考えられる封じ手の仕組みは、楽しみの一つになっているとも思います」と、ファンが楽しむ間に、対局者たちはその後の展開について、無数の分岐をイメージしている。
昨年の初出場は、1回戦で羽生善治九段(49)の前に敗退。今年はまず1勝を目指すが、相手は名人3期の実績を持つ佐藤天彦九段(32)だ。「実績はもちろんですし、人としてもトップ棋士像そのものと思います。王道の将棋ですね。この条件での対局ということで決断力も求められるところ、指し慣れた戦法にできればと考えています」と、強敵との早指しに、奇をてらうことなく真っ向勝負で立ち向かう。
他の棋士同様、新型コロナウイルス感染拡大により自粛期間で苦労した。インターネットを活用し、研究会も行ってきたが「目が疲れるので回数は少なくしました」と、実戦感覚を完全に取り戻すには、少し時間が必要だ。その分、以前のように将棋が指せることのありがたさも実感できた。
小学生のころ、「こども大会」岡山大会低学年の部で、優勝したことがある。「決勝戦が舞台上で和服を着用して対局できるということで、それを夢見て参加しました」。今や、子どもからも憧れられる存在になった斎藤八段の指す一手は、ファンにどんな夢を見せるか。
(写真提供:日本将棋連盟)