「山口県および秋田県へのイージス・アショアの配備を撤回するという決定に至った。こうした事態に至ったことを深くお詫び申し上げる」。
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昨日の朝、石破議員、小野寺議員、岩屋議員など歴代の防衛大臣経験者も出席する自民党国防部会で頭を下げた河野防衛大臣。配備計画による自民党への逆風で落選した元候補者に言及、「取り返しがつかない」と涙ぐむ場面も見られた。
今回の配備計画撤回について、軍事政策や安全保障問題に詳しい小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター特任助教は「非常に驚いた。イージス・アショア導入は日本のミサイル防衛政策やその他の様々な計画の前提になっていたし、アメリカとの調整もそれに基づいて進められていた。ここで計画が急に止まれば、それらをすべてやり直さなければならない。また、そもそも計画が非常に杜撰だったということが分かってきていて、そのことにも驚いている」と話す。
北朝鮮から日本に向けて弾道ミサイルが発射された場合、日本海上のイージス艦が搭載する迎撃ミサイル(SM3)が、次いで地上に配備された地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段構えで対処するというのが従来のミサイル防衛システムだった。そこに山口県と秋田県に配備したイージス・アショアのSM3ブロック2Aを加えることで、より強固な態勢にしようという構想だった。
ところが、このイージス・アショアからミサイルが発射された場合、その一部(ブースター)が演習場の外に落下する可能性があり、それを回避する技術開発にかかるコストが日米で2200億円以上(日本1100億円)、期間も12年が必要となることが判明。また、こうした課題に関する防衛省の説明が不適切だったことが周辺住民に不信感を生んでいた。
「もともとイージス艦に搭載されるものなので、海上で発射する分には落下物は問題にはならないが、これを日本の狭い国土に置いて大丈夫なのか、という懸念はあった。これに対し防衛省は“大丈夫だ”と言ってきたが、ここにきて“やはり落ちるかもしれない”と言い出した。今までイージス艦を運用してきたわけで、ブースターがどの辺りに落ちるかということも分かっているはずなのに、なぜこんな住宅地に近い場所に置こうと思ったのだろうか。自衛隊の用地だったから手っ取り早いということなのか、何とかなると思っていたのか。そういう点が、説明を聞いていて非常に納得がいかないところだ。イージス・アショア自体はいいシステムだし、より安全に置ける場所もあると思う」(小泉氏)。
一方、すでに配備されているPAC3は都心の防衛省にも配備されている。
「PAC3が発射されるのは、日本のPAC3の迎撃が成功して破片が落ちてくるか、さもなくば核弾頭が落ちてくる、という極限的な状況だと言える。核弾頭が直撃して何十万もの方が亡くなるのに比べれば、破片の落下で亡くなる方が出るのは、申し訳ないが許容範囲ではないか、という究極の選択の話だと思う。これに対しイージス・アショアは例えば東京や大阪に落ちてくるミサイルを秋田県、あるいは山口県で迎撃するものだ。つまり“守られる人”と、“落下物が落ちてくるかもしれない人”が別になるということになる。これが最大の問題だと思う。東京を守るために秋田や山口に負担を強いるということであれば、やはり地元の人にはリスクも含めてきちんと説明しておくべきだった」(同)。
今後について河野防衛大臣は「昨今の東シナ海の情勢に鑑みて、イージス艦を弾道ミサイルの防衛にあてるというのも、決して安全保障上得策ではない。その状況に変わりはない」との見解を示している。
小泉氏は「本来、イージス艦は味方の艦隊を敵の攻撃から守るためにあるもので、例えば中国海軍から集中的なミサイル攻撃を受けた場合、これを阻止するという任務になる。ただ、これが弾道ミサイル防衛にも使えるので北朝鮮のミサイルの対応をさせているだけで、本来の任務が十分にできなくなっているのが実情だ。その点、イージスのシステムを陸上に配備すれば陸上自衛隊の運用になるし、イージス艦が本来の任務に回ることができる。そういう背景もあった」と説明。
その上で、「メガフロートという巨大な人工島を造るという考え方もあるが、こちらも相当な費用がかかるし、上陸してくる破壊工作員などに対しては非常に脆弱だ。それなら海上自衛隊がイージス艦を増やせばいいという話になる。実際、河野防衛大臣もイージス艦を増やす手もあると言っているし、6隻から8隻に増やすというのは既定路線でもある。それでも海上自衛隊は人的リソースがカツカツなので、珍しく“これ以上はきつい”と主張している。やはり防衛省側の不手際なのに、“海上自衛隊頑張れ”というのは不本意だろう。イージス艦を増やしたとしても、人と予算を増やしてあげなければ、ろくに動かせないということにもなってしまう」と指摘した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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