コロナ禍で増えるDVの相談…経験者の夫婦が明かす、逃げられない被害者、やめられない加害者という“負のループ”
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 全国に緊急事態宣言が発出された4月以降、DVや虐待の相談件数が増加していると報じられている。

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 加害者支援を行うNPO法人「ステップ」の栗原加代美理事長は「この4~6月は、いつもの年の6倍くらいだ。また、女性の加害者も増えている」と明かす。「DVというのは行為ではなく関係性を表す。力と支配。ケンカや注意、相談など夫婦間のやり取りの中で、加害者側に相手を支配したい欲求、そして被害者側に相手に対する恐怖心があった場合、DVとして成立する」。

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 また、NPO法人「DV対策センター」の穂志乃愛莉代表理事は「継続的にご相談を受けていた方のうち、約4割で一時的に連絡が途絶えてしまった。やはり加害者となる配偶者が家にいる時間が長くなってしまったために、監視が強くなったという理由が考えられる」と話す。

 しかしネット上には「なぜやめられないの?病気?」「逃げればいいじゃない。なぜ逃げないの?」といった声も散見される。そこで6日の『ABEMA Prime』では、DVの加害者と被害者になった経験を持つ一組の夫婦に話を聞いた。

■「DVを受けているという認識はなかった」「相談するのは格好わるいこと」

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 「暴言は日常的にあったし、ひどい時には5~6時間説教タイムが続くこともあった。逆に無視をする、平手で頬を叩く、頭を叩くということもあった」。そう振り返るのは、宮崎県在住の中川拓さんだ。2015年に結婚した二人だが、当初から妻・亜衣子さんへの暴力や、人格否定などの暴言が始まる。時には5時間を超える説教や過剰な行動監視もあったという。

 10歳年下の妻に対し、「ちょっと頼りないところばかりが目についてしまって、守ってやらなきゃダメだな、いろいろ教えてやらなきゃダメだという思いがあった。例えば家のルールを守らなかった時、1回目は“何で守らないんだっけ?”と普通に言うが、3回目続くと、“いい加減にしろよ、座れ、そこ!”“ふざけんじゃねえ、土下座しろ”と」(拓さん)。

 拓さんにとって、こうした暴力や暴言は、ダメな妻を変えるための“しつけ”という感覚だったのだという。「私は正しいことを行っている正しい人で、妻はちゃんとできない悪い人、みたいな感じ。そして、何を言っても“そうです。私が悪うございます”という感じだったが、表情を見ると反省しているようには見えなくて、“なんでうまくいかないんだろう、どうしたらいいんだろう”と思っていた。そして、良くないことだとは思っていても、DVだとは全く思っていなかったし、むしろテレビでDVをしている人を見ると、“何でこういうことをするかね?”と言うくらいだった。だからやめる理由もなかった」(拓さん)。

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 一方、妻の亜衣子さんは、当時について「“こうでこうでこうだから、お前が悪いよな?”って理屈で説明されると、私も“確かに、私が悪いのか”と思ってしまっていた。“なんかおかしいよな”という感覚はあっても、ダメなところを指摘してくれるのは、私のことを大事に思ってくれているのかなと思うようにしよう、ということで、DVを受けているという認識はなかった」と振り返る。

 「相手に束縛されるような女性は弱い、格好悪いと考えていたので、誰かに相談するということは、“私はダメな女性だ”と言ってしまうことになるので、恥ずかしくて言い出せなかった。特に暴力に関しては恥ずかしい気持ちが強かった。自分も悪いという気持ちがあったので、相談することは自分のことを棚に上げてパートナーのことを悪く言っているという感覚もあった」(亜衣子さん)。

■「ぷつんと糸が切れた」「精神的に自立できていなかったことに気づいた」

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 2017年には第一子を出産した亜衣子さん。それでも拓さんのDVはやまず、翌2018年、別居を決意する。それでも拓さんの言動がDVだという認識を持ち始めたのは、家を出てからだったという。

 「本当にぷつんと糸が切れたような感じだった。こういう両親のもとで子どもを育てたくないと思った。1歳4カ月くらいになり、色々なことが分かるようになってきたので、このままじゃ本当にまずいぞという気持ちが強くなってきた。こんな家庭は終わりにした方がいいと思った。夫が留守の隙を狙って、黙って家を出た。それしかないと思った。そして、DVについて考え始めた。よくよく考えると、全部うちのことじゃないかと思った。それまでは、私が変わればどうにかなるとか、私の努力が足りないと思っていた」(亜衣子さん)。

 「あれ、おかしいなと感じ、前の職場で一緒だった方に相談した。子どももいるし、私としては離婚したくない。しかし、“何で離婚しないの?愛している相手が離婚したいと言っているのに、それを受け入れないのは愛なの?"と言われた。その時に、妻が私を捨てる権利を認めていないということに気が付いた。これはDVなんだという確信はあったが、やっぱり愕然としたというか、サーッと風が吹いた感じだった。脱力して、何も考えられなかった。そして、ステップの更生プログラムにたどり着いた」(拓さん)。

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 ステップの更生プログラム(1年を通して全52回、1回2時間)では、DVの定義・感情のコントロール・恐怖を与えない、対等で尊重する話し方など思考と態度を学ぶ。「学ばないと変わらない。過去と相手は変えられないが、自分と未来は変えられる」(前出の栗原氏)。

 亜衣子さんも、拓さんが更生プログラムを受けているということを知り、再び連絡を取るようになったという。そして昨年には同居を再開、夫婦でDV問題支援団体「エフエフピー」を設立。現在は静かに暮らしている。

 「別居中も、向こうからメールという形で近況を伝えてくれていた。そのうちに変化を感じることができるようになっていった。メールから電話になり、実際に会ってみたり。最初は怖い気持ちもあったので、ちょっとずつ段階を踏んで、大丈夫かな?大丈夫かな?という感じだった。言葉遣い、表情、私にかける言葉も何もかも以前とは違っていた」(亜衣子さん)。

 「“夫婦は一緒にご飯を食べるべきだ、夫婦は一緒の方向を向いているべき”という具合に、“何々べき”というものが自分の中にたくさんあり、そうじゃないものを提示された時に“これおかしくない?”となる。そこで相手が“うんそうだね、おかしいかも”と言ってくれるところに甘えていってしまう。今にして思えば、自分の弱さだ。自分の機嫌を自分で取ることがでいず、他人に依存する。自分に優しくしてくれ、自分を愛してくれと。DVの正体は、相手への依存だと思う。経済的には自立できていても、精神的に自立できていなかったなと思う」(拓さん)。

■「口喧嘩ができるまでになった」「嫌だったら抜け出して大丈夫だと言いたい」

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 再び家族3人で暮らす日々。「今は“私はこう思う”とか、“それについてはこうして欲しい”とか、“言い合い”ができるようになってきた。幸せだ」と話す亜衣子さん。「被害に遭っている方には、あなたの人生はあなたが決めていい、と言いたい。本当に嫌だったら、抜け出して大丈夫だと言いたい」。

 2人の話を受け、「blackdiamond from2000」のあおちゃんぺは「拓さんが変わろうとしたのがすごいと思うし、亜衣子さんがお子さんを連れて離れようとしたこともすごいと思う。逆に言えば、全員がこのようになれるわけではないということを被害者の方々には知ってほしいし、まずは耐えずに逃げてほしい。私も学生時代にヤバい彼氏がいて、実際にDVも受けていた。それでも“この人は本当はいい人だから”と離れられなかった」とコメント。

 拓さんは「彼女は“また一緒に住もう”と言ってくれたし、私がエフエフピーの活動をしたいと言った時にも“手伝う”と言ってくれた。ただ、再び一緒に住み始めたとしても、すぐに何もかもハッピーにいくわけじゃないということは分かっていた。最初の頃は彼女に笑顔がなかったので、とにかく笑顔を取り戻すということだけを念頭に置いて接したし、まさに“3歩進んで2歩下がる”、を繰り返した。やはり気合論、根性論でどうにかなるものではない。それでも、しっかりしたプログラムを見つけ、通い続けて自分を磨き続けることができれば、行動は変わってくると思う。そして、私が変わったかどうかは、私が決めることではなく、彼女が決めること。それでも、以前と同じではないという手ごたえはあるし、口喧嘩ができるまでになった。ケンカができない夫婦は、どっちかが自分を殺して、我慢をしていると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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