プロレスリング・ノアの勢力図が、大きく変わるかもしれない。元WRESTLE-1王者・稲葉大樹の参戦だ。
稲葉はABEMAのスタジオマッチ『NOAH NEW HOPE』の7月5日配信回からノアに参戦。古巣W-1が活動休止となり、その動きが注目される中でのことだった。
しかも初戦でいきなり清宮海斗とシングルマッチ。これは団体からの期待度の表れだろう。試合には敗れた稲葉だが「より威力があって奇麗なのはどっちか。意地ですね」というタイガースープレックスの打ち合いなど、その実力はノアファンにも届いたのではないか。
「ノアはコロナ期間中もずっとプロレスを動かしていたし、僕もそれを見ていました。『NEW HOPE』という新しい試みにも興味がありましたね」
清宮線を終えた稲葉は、ノア参戦について語ってくれた。
「僕がノアのリングに上がらせてもらうっていうのは感慨深いもにがあります。ファン時代から見ていた団体だし、初めて会場に見に行ったプロレスがノアだったんですよ」
ノアとは、忘れられない“因縁”もある。稲葉は昨年大晦日に清宮と“王者タッグ”を結成し、中嶋勝彦&芦野祥太郎と対戦。その流れで中嶋とタイトル戦を行ない、完敗を喫している。ベルトを他団体に流出させてしまっただけでなく、試合内容でもマイクアピールでも中嶋にズタボロにされた。気持ち的にかなり落ち込み、プロレスそのものに対してネガティブになっていたという。
「でも、そこでもう一度頑張ろうと思えたのはノアの存在があったから。一度ダメになっても、そこであきらめるわけにはいかない。新しいチャンスがきた以上、前に進むしかないので。僕はノアで人生を前に進めていきたい」
中嶋へのリベンジという思いは「今のところはないです」と稲葉。それ以前の段階からのスタートだと考えているようだ。
「W-1でベルトを持っていたとか、そういうのは関係なくまっさらな状態からのスタート。あくまでゼロからという思いでいます。自分がいた団体がなくなって、コロナで練習も不十分。だけどこれをいいきっかけにしなきゃいけない。いい意味で、ここからが新しいスタートです」
コロナ禍はもちろん、W-1活動休止により練習してきた道場もなくなった。6月に入るまでリング練習ができない状態だったという。
「正直、試合勘はまだまだでしたね。そこは差が出てしまったと思います」
久々の試合でもあった清宮戦について、そう語った稲葉。キャリアは自分のほうが上だが「清宮さん」と呼び、試合後にはタッグ結成をアピールした。
「闘ってみて、あらためて清宮さんは凄いと思いましたね。打たれ強さもあるんですけど、試合をしているうちに清宮さんの世界になっていくんですよ。何よりキラキラしている。キャリアに関係なく、そこは認めているし吸収できるところはしたい。負けはしましたけど、清宮さんには全部受け止めてもらってスッキリしました。今の自分が分かった感じですね。そこで思ったのは、もっと清宮さんを感じたいということ。そのためには隣にいる(タッグを組む)のがいいなと」
2人はさっそく、12日配信の『NOAH NEW HOPE』でタッグを結成する。それぞれの能力からすればタッグベルトも狙えそうな強力なチームだけに、その始動も要注目。稲葉にとっては、まずノアでの第一歩となる勝利がほしいところだ。
「新しい環境で、よりプロレスを楽しんでいきたい。そのためにも1試合1試合、着実に結果を出すことが大事ですね。そうやって稲葉大樹を高めていきます」
謙虚に、しかし覚悟を持ってのノア参戦から、稲葉の新しいプロレスキャリアが始まる。