12日に無観客で開催された「RISE on ABEMA」において、世代を超えた「喧嘩屋」が激突。およそ1分間の壮絶な打ち合いの末、真っすぐに落ち、そこから前のめりに倒れ込んだ敗者のもとに、ドクターが駆け寄る衝撃的なKO決着となった。
28歳の山口裕人、38歳の松本芳道の一戦は、世代を超えた“喧嘩マッチ”として注目を集めた。久々の試合ということもあり、山口が「殺るか殺られるか」と煽れば、「処刑してやる」と応じた松本。戦前の“舌戦”からすでに殺伐としたムードだった。
ただ、「不良同士の世代間闘争」と銘打たれつつも、両者は格闘の世界でも実績を残している。難波のヒットマンこと山口は、現在はムエタイのWPMF世界スーパーライト級暫定王者で、数々の国内タイトルに加え、Krush参戦時には、あの木村“フィリップ”ミノルを左フックでKOしたハードパンチャーとしても知られている。ただ、ここ1年の戦績は1勝5敗と絶不調の中でもがき続けていた。
一方の松本は元新日本キックボクシング協会のライト級チャンピオン。2010年のK-1 WORLD MAXでは、63kgのジャパン・トーナメントで準決勝に進出。2012年にはキックからプロボクシングに転向してKOの山を築いたが、昨年RISEでキックに復帰するも連敗と後がないところ。つまり、お互い“崖っぷち”。気合が入らないわけもない。
リングに上がった二人は舌戦の熱気をそのままにフェイス・オフの睨み合いを展開した。ゴング直後、ローやパンチ、ヒザと小気味よく当てていった松本に対して、山口は振り回すような右のオーバーフックを皮切りに、顔面、ボディとパンチを叩き込む。対する松本もカウンターを狙うが、山口の怒涛のラッシュに後退り気味だ。
「効いてない」とばかりに両手を広げた松本だが、その後も山口のボディへの猛攻、さらに再び右のオーバーフックなど、繰り出されるパンチをことごとく被弾。山口はコンパクトな打ち分けも冴え、パンチの回転が止まらない。防戦一方となった松本に対し、山口は最後まで2発の右フック、ボディ、左フックを力強くねじ込んで意識を刈り取った。
無観客の会場に響いた無数の乾いたパンチ音。終わってみれば、1分20秒での決着は宣言どおりの豪快な真っ向勝負。期待どおりの熱戦に視聴者からは「喧嘩や喧嘩」「パンチ食らいすぎ」「こういう喧嘩ファイト嫌いじゃない」など、興奮気味の反応が寄せられた。
試合後「いい成績も残せてないのに(試合に)選んでくれたんで、盛り上げなアカンから必死でした(笑)」と、はにかみ笑顔を浮かべ本音を漏らした山口。連敗脱出に安堵したのか、さきほどまでのギラギラした眼は、別人のようになっていた。
“パンチ一辺倒”だった試合運びについては「めちゃくちゃ蹴りの練習をして、蹴ってやろう思ったけど、気がついたら1回も蹴ってないです…」と苦笑い。連敗脱出に向け、死に物狂いで臨んだ一戦を振り返った。
(C)RISE