4カ月ぶりの有観客興行として開催された7月18日のノア・後楽園ホール大会は、衝撃的な結末を迎えた。
メインイベントは潮崎豪&清宮海斗vs武藤敬司&丸藤正道。無観客試合の6人タッグマッチで武藤に圧倒された清宮が再戦を望み、組まれた試合だった。当然、清宮は試合序盤からひたすら武藤をターゲットに闘いを挑む。一方、武藤は清宮を迎え撃つだけでなくGHCヘビー級王座も視野に入れており、現王者である潮崎との顔合わせも注目された。
たが、そういうカードだからこそ、ゲスト解説の山田邦子は「丸藤は負けられない」と指摘。1人だけテーマがないように見える試合だからこそ、爪痕を残そうと燃えているはずだという分析だ。
実際、この日の丸藤は動きがキレまくっていた。潮崎とはお互いの得意技であるチョップの打ち合い。皮膚を裂かんばかりの破裂音が場内に響き渡る。この日の後楽園は、新型コロナ感染防止のため声を出しての応援はNG。それだけに余計に打撃の音が際立った。
さらに武藤とはヒザ蹴り「虎王」とシャイニング・ウィザードのサンドイッチ攻撃を決める。トラースキックも完璧な当たり。そして最後は新技「真・虎王」で潮崎をKOし、3カウントを奪ってみせた。
(清宮vs武藤のシングルも決定。試合後にはそれぞれが睨み合い)
この真・虎王は相手の腕を固め、前傾姿勢にさせて身動きを取れない状態にした上で横から叩き込む2段式のヒザ蹴り。大型選手を倒すための技として構想してきたという。
この結果により“脇役”だったはずの丸藤が見事“主役”の座に。試合後、マイクを握ると潮崎のベルトに挑戦表明した。「I am NOAH」を決め台詞とする潮崎に対し、丸藤はこう言い放つ。
「I am REAL NOAH」
丸藤は、今では数少なくなったノア旗揚げメンバー。しかも今年は旗揚げ20周年のメモリアルイヤーだ。
「俺は20年、ノア一筋でノアを背負ってやってきたんだ。ノア20周年、(チャンピオンであるべきは)俺しかいないだろ」
このタイミングで“方舟の象徴”としてのプライドを主張してきた丸藤。潮崎とのタイトルマッチは、8月5日の後楽園ホール大会で行なわれることになった。20周年の旗揚げ記念日である。
丸藤がチャンピオンに返り咲くとすれば、これほどふさわしい日はないだろう。逆に丸藤に勝てば、潮崎の王座はさらに盤石となる。正真正銘の大一番だ。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア