俳優の三浦春馬さん(30)が18日、東京・港区の自宅マンションで意識不明の状態で見つかり、その後死亡が確認された。現場からは遺書が見つかっており、自殺とみられている。SNSでは悲しみのコメントと共に、死の背景に何があったのかという声が相次いだ。
様々な役を演じてきた三浦さんの素顔について、スポーツニッポンは「『真面目な人』と仕事関係者は口をそろえた」と伝えている。また捜査関係者によると、自宅で見つかったメモの中には仕事に対する思いや役者論が詩のようにつづられていたという。中には具体的な俳優名を挙げて、「こんな意見をかわした」と書かれたものもあったそうだ。
熱心に仕事に取り組む一方で、3年ほど前から三浦さんの変化を感じ取っていたという知人の話も。「劇的に酒量が増えた。嫌なことから逃れたかったのか、“もうどうでもいい”という感じで飲むことが多かった」。ちょうどこの頃、三浦さんの母親が茨城県の実家から出ていくなど、プライベートでも悩みを抱えていたとみられるとスポーツニッポンは伝えている。
三浦さんは、24日放送のテレビ朝日系の音楽番組『ミュージックステーション』に出演予定だったほか、NHKの旅番組『世界はほしいモノにあふれてる』、ドラマ『太陽の子』が撮影済みで、9月からのTBSドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』は撮影中。さらに、23日公開の映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、来年公開の『ブレイブ -群青戦記-』の撮影を終え、12月にはミュージカルが控えているなど、様々な仕事が予定されていた。
仕事も充実する中での三浦さんの突然の死について、自殺予防の心理カウンセリングも行っている明星大学准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「最も見抜くのが難しい」と話す。
「僕も普段から自殺の問題には向き合っていて、その度ごとに何ができるのが、何ができなかったのかと考えるが、三浦さんがこういう形で亡くなったのは、一言でいえば『難しい』ということを最初に思う。いわゆる自殺のリスクファクターというものが学会やWHOから出ているが、精神疾患があるとか職業上の問題を抱えているとか、身近な人が亡くなったという喪失体験などがなかったとすれば、サインとして見つけるのはなかなか難しい。仕事がこれだけ充実していて、かつ個人のレベルでヘルプサインを出さなかったとすれば、周りの人が気づいて予防することは至難の技だったのではないか」
また、藤井氏は三浦さんの演技外での表情に注目し、「演技以外で見る三浦さんは、どちらかというと見る度に印象が変わるイメージがあった。それは彼の役者としての天才的な才能だと捉えていたが、一方で『芸能界以外の仕事をしたい』と言ったこともあるという報道もあって、もしそうだとすれば俳優としての自分の在り方に迷って自己像がグラグラと揺らいでいる時もあったのではないか」と推察。
その上で、「一般論として、ある日ある時に急に自ら命を絶つことを思いつくかというとそうではない」とし、「生きることと死ぬことを、ある意味2本柱で思春期の頃から抱えてきて、ある時に調子が悪かったり仕事が重なったり、その日に考えたことなどいろいろな要素が積み重なって、一瞬の判断で企図してしまうことは一定数ある。三浦さんもそういうパターンだとすれば、長年のベースに何らかの要因による短期的な判断が加わって一線を越えてしまったのかなと思う」との見方を示した。
心の不調や悩みについて、厚生労働省が相談先一覧をまとめているほか、「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556 ※曜日・時間は都道府県などによって異なる)」などで電話相談を受け付けている。自分の気持ちを他人に話す効果について藤井氏は「話せる時と話せない時と両方あると思う。ただ、人と話を共有して聞いてもらうということは、自分が思っていることを外側に出して形にする作業であるし、話している間に自分で何かに気づくこともあると思う。一般的に、自殺衝動がもの凄く高まって行動に移そうという最高潮のタイミングは、実は長く続かないとも言われている。10分ぐらいの範囲だとされていて、僕も『自分の衝動が抑えられない』というクライアントからの質問に対して、『まず30分耐えてみましょう。30分耐えて、できればそのまま寝てしまいましょう』と言うことがある。1人で耐えることが難しかったら誰かに話して、たとえ何か核心めいたことが話せなくても、話すことでその時間をやり過ごすということもひとつの対処として考えられる。話せなければ誰かと一緒にいるだけでもいい」と推奨する。
また、三浦さんの件を受けて自身の頭に“消えたい”“死にたい”という考えがよぎってしまう人へは「まず、三浦さんは自分の後を追ってということは一番望んでいないことだと思う。なので、自分が話せる先を探したり、頼れるリソースがあれば是非試してみていただきたい。『話すことでは解決しない』と思うかもしれない。ただ、そう思うのも本来の自分ではないと考えて欲しい。また、周りの人も、コロナ禍でソーシャルディスタンスや感染拡大予防で人とのつながりや雑談、コミュニケーションも最小限にとされているので、自分の近況を人と共有したり聞いてあげたり、声をかけてあげたりすることができるといいと思う」と呼びかけた。
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