この春からフリーとしてノアに参戦すると、無観客試合の中で抜群の存在感を発揮。丸藤正道、望月成晃、宮本裕向と、イニシャルがMの選手を集めたユニット「M's ALLIANCE」を組んでもいる。ユニットに所属しているのは、その団体に本腰を入れている証だ。
有観客興行再開となった7月18日の後楽園ホール大会では、武藤はメインイベントに出場。丸藤と組み、潮崎豪&清宮海斗と対戦している。
ノア新世代のエース・清宮からの対戦要求を受け、6人タッグに続いて組まれた今回の試合。武藤は先発で清宮とぶつかり、まずは前回同様にグラウンドで攻め込んでいく。華のあるファイトスタイルで知られる武藤だが、そのベースにあるのは新日本プロレス仕込みの“ストロングスタイル”だ。
そうかと思えばリング下に降りて間合いを取り、絶妙な緩急をつける。この大会、中継のゲスト解説を松井珠理奈が担当しており、放送席の珠理奈と指を合わせて「M」のハンドサインを作る場面も。これに「うれしい!」と珠理奈。武藤たちはイニシャルMの珠理奈をM's ALLIANCEに勧誘しており、珠理奈も前回の解説時に加入を希望していた。今回はリングサイドでの解説で、場所的に“セコンド”とも言えた。武藤敬司と松井珠理奈の共演が実現するというのも、今のノアならではだろう。
さらに武藤は丸藤のヒザ蹴り「虎王」とシャイニング・ウィザードの合体攻撃で潮崎に大ダメージを与えると、清宮に対してはドラゴンスクリュー&虎王。丸藤が新技「真・虎王」で潮崎を仕留める間に清宮を足4の字固めでガッチリ捕獲している。このあたりは前回、6人タッグで対戦した時の再現でもあった。「まだまだ寄せ付けない」というアピールか。
試合後、清宮からシングルマッチの要求を受けると「PCR検査して、お互い陰性だったらやろう」と武藤。インタビュースペースでは「俺は若いヤツをエキスにして生きながらえてるから」という言葉も。若い清宮を受け止めることが、武藤にも刺激になっているようだ。
また武藤はIWGPヘビー級、三冠ヘビー級に続きGHCヘビー級王座奪取も視野に入れており、清宮とのシングルは「自分への査定」でもあるという。現王者・潮崎に丸藤が挑戦することが決まっているだけに「俺たちで(王座戦を)やってもいいんじゃないか」とも。丸藤曰く「清宮とやることで武藤さんが若返ってる」。ノアのリングは、武藤にとってまぎれもない新天地だ。
文/橋本宗洋