歌手・槇原敬之被告の初公判が21日午前、東京地裁で最も広い104号法廷で開かれた。
紺色のスーツとネクタイ、マスクを着用して出廷し、職業について「シンガーソングライターです」とはっきりとした口調で答えた槇原被告。その後、裁判官から起訴内容について間違いがあるかを問われると、「いえ、ありません」と起訴内容を認めた。
自宅から見つかった覚醒剤の使用器具については、「捨てるのは気を付けたほうがいいという話があったので自分のところに置いていた」「薬物はここ数年使っていません」と話し、その後の被告人質問では「いろいろな方々やファンの皆さまに本当に申し訳なく思っています」とファンらに謝罪する場面もあった。
初公判での槇原被告の様子を受けて、BuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は「本人が起訴内容を認めたということで、『ここ数年は使っていない』という言葉を信じるなら、このまま断ち切ってほしいと思う」とコメント。
一方で、槙原被告の楽曲に関して、「逮捕時に『作品に罪はない』という声がネット上であがり、現在も槇原被告の楽曲はサブスクリプションサービスで聴いたりYouTubeで見たりすることができる。対照的なのが電気グルーヴで、ピエール瀧さんが逮捕された時には出荷済みのCDが回収されたり、配信が停止されたりして聴けなくなった。当時に比べると『作品に罪はない』という理解が浸透してきたと思うが、槇原被告が起訴内容を認めたことを受けて、各種サービスがどう対応するのかは注視したい」と話す。
神庭氏は1月、BuzzFeedの《芸能人の薬物イニシャル報道、Mr.マトリが批判「捜査の障害」「不倫問題と一緒」》という記事で、厚生労働省元麻薬取締部部長の瀬戸晴海氏を取材している。
この記事で瀬戸氏は、「次の逮捕者は●●」という芸能人のイニシャル報道について「マトリでは『誰だ、これ?』って言ってますよ」「ごくたまに、そうした情報をかすっていることはあるかもしれない。でも、『狙っている』とか、そんなことはない」と否定。また、「芸能人逮捕は大金星?」という質問に対しても、「有名人であっても一般人でもあっても、取り扱いはまったく同じ」「メディアが騒ぐのは、むしろ捜査の障害になる」「(単なる芸能人バッシングは)不倫問題と同じ」だと答えている。
神庭氏はこの取材を振り返り、「イニシャル報道のほとんどが信憑性に乏しい内容で、捜査の障害になっているという話が印象的だった。意外だったのは、芸能人の薬物報道に関して、瀬戸さんが『完全に過剰報道、過熱報道』だと言っていたこと。捜査機関側の人間からすれば、“宣伝”としてどんどん報道してほしいものだとばかり思っていた」とコメント。
また、神庭氏も芸能人の薬物報道の在り方は見直すべきだとの考えを示し、「薬物報道は、逮捕された芸能人をサンドバッグのように袋叩きにして、視聴者が見てスッキリするための“ショー”ではない。日本では犯罪だが、同時に治療の問題でもある。彼らが依存症を克服して立ち直っていけるように見守っていくのが、報道のあるべき姿だと思う。捕まった人を見て『自分も気をつけよう』と考える啓発効果があることは否定しないが、それが行き過ぎるあまり、一度道を踏み外してしまったら二度と立ち直れない、というようなことになるのはよくない」とした。
なお、検察側は槇原被告に懲役2年を求刑し、判決は8月3日に言い渡される予定だ。