武尊が動いた。7月21日のKrush後楽園ホール大会でのことだ。
メインイベントはレオナ・ペタスvs大岩龍矢のスーパー・フェザー級タイトルマッチ。8連勝中、以前から武尊が持つK-1王座への挑戦をアピールしていたレオナに対し、大岩は武尊と同じジム・KRESTに所属。海外での練習もともにする親友だ。
レオナが勝てば武尊戦実現に大きく近づく。そんなテーマもあった試合は、レオナが判定勝ち。マイクを握ると武尊への挑戦をあらためて口にした。
そこに現れたのが武尊だ。大岩とともに一度はバックヤードに戻っていたが、レオナの挑戦要求を聞くと足早にリングへ。そしてマイクを握ると「やろうぜ」。両者の対戦は決定的と言っていいだろう。
大会後、会場で武尊にインタビューを敢行した。レオナのマイクは予想されたものだったが、武尊にとってはそうではなかったという。
「龍矢が勝つと信じてましたから。今日の龍矢は20点。アイツの良さが出ていなかった。負けない試合をしてしまったなと」
試合を終え、悔しがる大岩の顔を見て、武尊はレオナとの対戦を決意したという。
「オレが龍矢の仇をとる。瞬間的にそう思いました」
控室に戻る途中、レオナからのアピールがあればすぐ踵を返そうと思っていたという。そしてレオナの声に、武尊が応えた。
「龍矢の強さを出させなかった、封じたという意味では(レオナの)強さは認めるところがあります」と武尊。だが自分の対戦相手としては「まだ具体的なことは考えてないです」。敗れた大岩の顔を見ての、あくまで直感的な行動だったのだ。
武尊がどの大会に出場するか、まだ正式には決まっていない。試合が決定すれば、3月のさいたまスーパーアリーナ以来となる。本人は「できるだけ早くやりたいです」。“自粛”期間中も、とにかく試合がしたいという思いでいっぱいだったようだ。
「いつでもいきます。仕上がってるんで」
レオナ戦への具体的な対策などはこれから。とにかく今は闘いを求め、親友の仇を討ちたいというエネルギーが武尊の中に充満している。レオナの挑戦を受けたというだけでなく、お膳立てされた会見でもなく、考えるより先に体が動いた。この“熱”こそが武尊の本質だ。
文/橋本宗洋