最近の将棋界は、何が起こるかわからない。最年少のタイトル記録に沸いたかと思えば、他のタイトル戦では千日手だけでなく、珍しい持将棋が2回も出るという「珍事ラッシュ」が訪れている。この千日手・持将棋の当事者でもある永瀬拓矢二冠(27)が「人生で記憶にない」というハプニングに見舞われたのは、7月25日のことだった。
現在、叡王戦七番勝負で豊島将之竜王・名人(30)と初防衛に向けて熱戦を続けている永瀬二冠。第1局から千日手指し直しとなり、第2局・第3局は、史上初となる2局連続持将棋(引き分け)。第4局まで3局連続で200手超えの長手数と、記録的な対局を続けている。
永瀬二冠が人生初のハプニングに見舞われたのは、プロ将棋界初の早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」でのこと。第4局に登場し、同世代の実力者・斎藤慎太郎八段(27)と熱戦を繰り広げていた。中盤、斎藤八段の角が不安定な位置にいることに狙いをつけ、5四の地点に持ち駒の桂馬を打とうとした。ところが右手の指で挟んでいたはずの桂馬がスルッと抜け出し、盤上の駒とクラッシュ。この不測の事態に慌てることなく、きれいに駒を並べ直したところは、さすが“軍曹”“中尉”という異名を持つ永瀬二冠の強心臓。対局後には「ちょっと人生で記憶にないですね」と、微笑みながら振り返った。
この大クラッシュに反応したのが、永瀬二冠と親交の深い解説の佐々木勇気七段(25)と視聴者だ。トップ棋士が対局中、これだけ派手に盤上の駒を崩すことはめったにないだけに「これだけ混乱初めて見た」「丁寧に直してから」「がっしゃーん」と、一連の動きに注目。また佐々木七段も、角に狙いをつけたところで起きたハプニングに「角を詰ましに行こうとしていましたね。でも桂馬が嫌がっていました」とコメントし、ファンの笑いを誘っていた。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで対局。全12チームが4つの予選リーグに分かれて戦い、各リーグ上位2位までが予選通過。決勝トーナメントは5本先取の9本勝負で行われ、勝ち越しが決定した時点で終了する。1チームは3人で、各棋士は1試合につき最低1局、最大3局の範囲で指す必要がある。対局者は各対局前に決定する。優勝賞金1000万円。
◆決勝トーナメント進出チーム
チーム渡辺、チーム永瀬、チーム康光、チーム三浦、チーム久保、チーム天彦、チーム広瀬、チーム糸谷
(ABEMA/将棋チャンネルより)