豪快なジャーマンを放つも、自らの頭部を強打して自爆。試合続行が不可能となるアクシデントに、実況席もファンも騒然とする一幕があった。
「投げた！ あぁ、自分で頭を打ったのか…暴走しすぎてしまった！」
“ジャーマン自爆”という予想外のクライマックスに、実況席が絶叫。ファンからも「珍フィニッシュ」「嘘だろ」「一番やってはダメ」「そんなことある？」など、困惑気味の声が殺到した。
7月24日に新木場「Studio Coast」で開催された「パンクラス316」で、葛西和希（マッハ道場）と平信一（綱島柔術/ZST）が対戦。静と動、水と油の対決は、見事な投げを放った平が自らの頭を強打するアクシデントでまさかの自爆。驚きの幕切れとなった。
（フェイスオフから対照的な写真左の葛西、右の平）
イメージも対象的な2人だ。“暴走柔術”こと元ZSTライト級王者・平に対し、冷静沈着なイメージの葛西は、「格闘代理戦争」2ndへのエントリーでその名が知られるようになった。桜井“マッハ”速人の門下としてプロに昇格し、昨年はパンクラスの登竜門「ネオブラッド・トーナメント」で決勝進出と着実にステップアップ。青森県出身で実家はリンゴ農家。入場テーマは吉幾三「おら東京さ行くだ」と、なんとも朴訥とした印象だ。
フェイスオフでも表情を崩さず仁王立ちの葛西と、お馴染みの腕組みポーズから睨みをきかせる平。試合前から個性と個性がぶつかり合っていた。
序盤も見た目どおりの展開。平が前に出て打撃でガシガシ行くが、葛西はケージ際でいなしながら押し込む落ち着きのある試合運び。粛々とテイクダウンを奪って主導権を握る。高い技術を誇る平も、下から浮かせて外側からヒール。逃れようと回転する葛西のふくらはぎを狙うが、それを潰して脱出する葛西。すかさずバックに入る平…見応えのある寝技の攻防が続く。1ラウンドのジャッジは3人が葛西につけた。
2ラウンド、今度はスタンドでの攻防。積極的に行く平だが、キック経験のある葛西の打撃はコンパクトで強い。両者譲らない打撃戦の中、平のパンツが緩み、ファールカップが外れるという珍しいアクシデントも。チェックのため客席を向いてタオルで隠すシーンでは、実況が「生着替え？ なかなかないシーンですね…」とコメントする場面も。
何かとバタつく平に対して、ここでも葛西は冷静沈着だ。無表情で正座、柔軟体操を繰り返して待機。ABEMAで解説を務めた大沢ケンジも思わず「このまま本を読みそうな顔してますよね…」と話す落ち着きぶりだ。
静寂のなか、ケージ際で組み合うポジションから試合が再開されると、一転して激しい攻防に。足をかけてテイクダウンに成功する葛西。対する平がヒールを狙えば、葛西は腕を狙う。上になった平がパウンドを振り下ろせば、下から殴り返す葛西。まさに一進一退の展開だ。
すると、バックを取り葛西を引っこ抜いた平が、豪快なジャーマン・スープレックス。見事なブリッジで弧を描いたが、投げた平の様子がおかしい。リングにうずくまった平に対して、先に立ち上がった葛西がパウンドを浴びせたところで、レフェリーが試合を止めた。
ジャーマン・スープレックスで頭を打ってしまった平。解説の西達彦も思わず「暴走しすぎたー」と絶叫。試合後、メディカルスタッフやセコンド陣が取り囲むなか、脱臼したのか腕をかばうような平の痛々しい姿が映しだされると、あまりにも不運なフィニッシュ・シーンに視聴者からも「珍フィニッシュ」「嘘だろ」「1人バックドロップ」「大丈夫か？」など、驚きと心配の声が多く寄せられた。
一方、勝利した葛西は試合後にツイッターで「自分は受け身をとりノーダメージでしたが、平選手が首から手に痺れが来てしまったみたいです…」と当時の状況を説明している。
投げた方が頭を打って敗戦という出来事は、過去、2018年のUFCの舞台でも起こっている。ジャレッド・ブルックスという選手が水車落としで頭を強打し、失神KO負けとなった珍事は有名な話だが、パンクラスでの平のジャーマン自爆も、格闘技ファンの記憶に残る一戦となりそうだ。
