コロナ禍で厳しい企業の経済状況に夏野剛氏「全ての企業を救うのではなく、“痛みを伴う判断”も必要だ」
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 新型コロナウイルスの影響により、経済が冷え込んでいる。菅官房長官は「現在は感染対策と両立させながら段階的に社会経済活動を再開しつつあるが、国内消費をはじめ持ち直しの動きも少し出ていると認識している」としているが、大手企業の業績が軒並み悪化、倒産件数も日を追うごとに増えている。

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 感染症数理モデルの研究をしていたこともあり、第1次安倍内閣で経済政策のブレーンだった高橋洋一嘉悦大学教授は「かなり前から“第2波”は来ている。しかも今回はGoToなども実施しているため、ピークの読みがすごく難しく、大きな波になる可能性もあると思っている」との見方を示す。

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 その上で、現下の状況について「倒産件数は、後から出てくる景気の遅行指標だ。中小企業の場合、手元の資金を1、2カ月分しか持っていない。短期の融資で凌いでも、売上が減ってもたなくなれば倒産してしまうことになる。あと2、3カ月すれば、さらに件数は増えると思う。失業率についても、そうした景気の先行きから推測することができる。おそらく4月~6月期のGDPは20~30%のオーダーで落ちるだろうし、失業率も3%くらいは上がってしまうのではないか。そうなれば、200万人近くの失業者が出る可能性もある」との見方を示した。

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 これまで政府は緊急経済政策として持続化給付金や雇用調整助成金、そして消費喚起策として、Go To キャンペーンなどを実施してきた。

 高橋氏は「日本社会の構成要素として企業は非常に重要だし、壊れてしまえば、後から政策で取り返すのは大変だ。これまでの企業支援策は良かったと思う。休業補償をして、雇用を確保するというのも世界のスタンダードだ。ただ、国が全てやるのは難しい。東京都のバランスシートを見ると資産超過でまだ10兆円くらいの余裕があるが、他は苦しい。国は地方に対して特別交付金を3兆円支出したのは非常に良かったが、さらに手厚い交付金をあげれば、きめ細かな休業補償ができるのではないか」と指摘。

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 一方、「政府が貸したお金を買い取る、つまり企業から見ると借金が棒引きになる手も最後の最後には残されている。しかし、それに頼り過ぎるのもいけない。また、休業補償で食いつなぐというのもいいが、コロナが3、4年と長引くとしたら、どこかで閉めるという判断をしなければならない。新薬やワクチンについて、年内くらいに目処が出ると思うので、そこが見切りをつけるチャンスになると思う。それまでは政府が支援をすると思うが、1年以上経ったら、また違う世界になっているかもしれない」とも話した。

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 ドワンゴ社長で慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「雇用調整助成金もあるし、ある程度の規模の企業の場合、今まで貯め込んできた内部留保がある。それによって従業員の雇用を守っていることを考えれば、潜在的な失業は3%よりも多いのではないか。問題は、体力のない企業だ。90%以上を占める中小企業、特に飲食関係については、国としても長期にわたって支えることはできない。そこでビジネスモデルの違いに着目した政策も打っていいのではないか。たとえば向こう1年、2年の賃料を半分にすることと引き換えに10年間の固定資産税の減免といったことも検討してもらいたいと思っている」と話す。

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 さらに、「自動車業界もグダグダなところは赤字決算になっているが、リーマンショックの時に、大きな航空会社の一つ、赤と白の会社が事実上潰れたが、国がお金を入れて助けた。ただ、あの時に潰していれば、今ごろ国内線の発着枠の半分くらいがフリーになり、OBたちが作ったLCCが10社くらいできていたかもしれない。そうなれば、世界で最も高いと言われる日本の国内線の運賃が3000円、5000円くらいになっていたかもしれない。つまり、痛みを伴うことをすれば、新しい世界が開ける可能性もあるということを心の隅に置いておいた方がいいということだ。こういう時には何でもかんでも助けないといけないというマインドになるし、政治的にもそれが正しいと言われがちだ。今は緊急時だからしょうがないとしても、1年後には痛みを伴う判断ができるような政治になっていれば、その後の10年、20年はもっといい日本になっている可能性はある」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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