いつでも気軽に健康相談ができるサービスとして去年12月にスタートした「LINEヘルスケア」。全国約2000人の医師(内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科)が登録されており、今年3月には新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済産業省の「遠隔健康医療相談窓口」支援事業に採択、今月末まで無料で利用できることになっていた。
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そんな中、相談者に対し「言葉にできないやつはガキンチョだということですよ」「生きている価値がないというのは正解なんでしょうねぇ」「深く考えると結論としては、死ぬのが正解となりますし、たぶん正解なんでしょう」などのメッセージを送信していた医師がいたことが判明。
運営元は3日、「お客様の気持ちを傷つけ、多大なるご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」「今後のサービス運営につきましては、モニタリング体制の見直し等を含む、再発防止策を検討してまいります」とのコメントを発表した。
政府が「オンライン診療」の普及を後押しする中で起きたトラブル。医療政策に詳しい五十嵐中・横浜市立大学准教授は「言葉遣いの問題だけでなく、背景には“こういうことをやってもらえるのではないか”という期待を持つ質問者側と、規制によって“現実的にはこういうことしかできない”という医師側のズレがあったと思う」と指摘する。
厚労省のガイドラインによれば、こうしたサービスは「オンライン診療」=患者の診断や処方箋等の診療行為をリアルタイムに行う行為、「オンライン受診勧奨」=診察を行い、医療機関への受診勧奨を行う行為(一般用医薬品の具体的な指示・処方等はできない)、そして「遠隔健康医療相談」=一般的な医学的な情報の提供などに留まり、診断など医師による医学的判断を伴わない行為に分けられている。LINEヘルスケアは、このうち「遠隔健康医療相談」に該当する。
「遠隔健康医療相談の代表例が子ども医療相談で、2018年には年間100万件の相談が寄せられている。夜間や日曜日にみんなが救急に来てしまうと、本当に危ない人への対応が間に合わないかもしれない。そこで子ども医療相談が交通整理をすることで、それほど緊急ではない40万件を振り分けることができた。ただし、“私のこの症状はどうなのか”という問いかけに対しては、あくまでも一般論の話しかできないシステムだ。だからこそ、医師でなくでも相談員になれる。LINEヘルスケアも同様で、“診療”や“診断“をするものではない。つまり、“皮膚にこういう形や色の症状があるから、これはじんましんかもしれない”というようなことは言えないことになっている。あくまでも“発疹があったら皮膚科を受診してください”と言うところまでだ。そういうことを予め分かりやすく伝えるべきだと思う。LINEという多くの人にとって使いやすいサービスなので、“提供できるのはここまでだ。きめ細やかなことはできない”と示せば、すごく役に立つサービスになると思う」。
熱中症についてLINEヘルスケアで相談した経験を持つウツワ代表のハヤカワ五味氏は「回復後に病院に行った方がいいかどうか相談しようとした。症状や病名を断定的に発言することはできないということは分かっていたが、具体的にこちらが聞かないと答えが返ってこないし、返ってきたとしても“はい”“いいえ”“ないです”というようにざっくりだったので、これでいいのかなと思った」と振り返る。
また、「専門医」「認定医」「学会所属」といった、医師のプロフィールの問題について五十嵐氏は「学会に入るためには推薦が必要だったりと、ハードルが設けられているケースがほとんどだ。一方で、医師免許を持っていなくても入ることはできるので、私自身もいくつか専門の学会に入っている。つまり、学会に入っていることと、医師としてその分野の専門知識を持っていることは必ずしもイコールではない。これに対して、専門医、認定医については、きちんとした資格認定制度がある」と説明した。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「医療者としてのコミュニケーションの訓練の課題と、オンラインで顔が見えない状態で起きることへの対応の課題について、分けて考えた方がいいと思う」と指摘。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「おばあちゃんにとっては人生相談を聞いてくれる医師のいる病院の評価が高いかもしれないが、すぐに薬をもらいたい若い人にとってはそうではないかもしれない。病院の口コミサイトを見ても“対応が悪かった”などは書いてあるけど、診察の内容までは踏み込んでいない。結局、医師に何を求めるのかは人によっては違うし、名医かどうか僕らには判断しようがないからだ。どのように医師を評価するのか、その基準の問題もあると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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