大阪府の吉村洋文知事は4日、ポビドンヨードを含むうがい薬が新型コロナウイルスを減らす効果が認められたとする実験結果を発表した。府と府立病院機構「大阪はびきの医療センター」が新型コロナウイルスに感染した軽症者を対象に、イソジンで日に4回のうがいをしたグループと、そうでないグループに分けてPCR検査を実施したところ、うがいをしてないグループは4日目にして陽性者が40%だったのに対し、うがいをしたグループは9.5%にまで低下したという。実験結果を受け、吉村知事は「薬事法上、効能を言うわけにはいきませんが、コロナに効くのではないかという研究が出ました」とコメントし、ネット上で波紋が広がっている。
【映像】普通のうがいの効果は? うがい薬を使わなくても「やる意義はある」(12分ごろ~)
ネットではうがい薬の転売が始まり、ポビドンヨードが入っていないうがい薬まで転売される始末となっている。SNS上でも「日頃から買っていた人が買えなくなるかもしれないし、市場を混乱させただけ」「吉村知事は寝不足なんだよ、判断ミスはそこから始まる」「大事なのは吉村知事の会見を見て各々がどう判断するかじゃないの?」など、さまざまな声が上がっている。
これを受け、吉村知事は4日、自身のTwitterで「また吉村がおかしなこと言い出してるとネット上の大批判がありますが、構いません」と言及。「松山先生の研究成果を信じて頂かなくても構いません。大阪の社会経済に壊滅的なダメージを与え、府民の健康と命の脅威となってるコロナから、なんとか府民を守るべく、今後もありとあらゆる努力をします」としている。
はたして、ポピヨンヨードが入ったうがい薬に効果はあるのだろうか。関西福祉大学・勝田吉彰教授は「(情報に)尾ひれがついてしまって、おかしなことになっている」と警鐘を鳴らす。
「まず、(吉村知事が発表した)研究効果というのは、すでに感染した人に対して重症化予防に(うがい薬の効果は)どうなんだろうかというもの。今元気で感染していない人が、感染予防になるかという話をしているわけではない。感染した人にとって一番怖いものは、喉についた菌が下に落ちていき、肺に入ってしまうこと。喉から菌が降りていく割合は、1割でも2割でも少ない方がいい。肺炎になって重症化することが(ポビドンヨード入りのうがい薬で)少しでも減っていくかもしれないということ。それをこれから確かめていく話だと思います」
外務省医務官の経験があり、渡航医学を専門に、2002年11月に発生したSARS渦中の北京で日本人を診断した経験を持つ勝田氏。「ポビドンヨードうがい薬で唾液の中の新型コロナウイルスが死ぬのか?」という質問にこう答える。
「ヨードは普遍的にいろいろなウイルスを殺してきた実績がある。その中で(吉村知事の発表は)唾液の中にあるウイルスを多少減らすことはできるのではないか、という内容。例えば、高齢者医療の中で、うがいで口の中をきれいにすることで、誤嚥性肺炎を減らすことは実際にやっている」
また、すでに肺に入ってしまったウイルスについて勝田氏は「うがいの効果は届かないだろうと考えるのが自然」だと明かす。さらに、ニューズウィーク日本版 編集長・長岡義博氏の「このニュースを見て、うがい薬を使う人が増えると思う、使いすぎるデメリットはあるのか」という質問に、勝田氏は「うがいとして使えば、それほど害のないもの」とした上で「今後誤解した人が出てきて、(うがい薬を)飲んでしまう人や空間に撒く人が出てきてしまう」ことを懸念。「甲状腺の病気、ヨードのアレルギーがある人は、まずは使う前に主治医に相談してください。ひょっとしたら危ないことになってしまう」と注意を呼びかけた。
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