元自衛官のフリーランスエンジニア、78歳で警備員に転身した元経営者…“70歳でも働く社会”が目の前に
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 少子高齢化が進んだ結果、高齢者の労働力にも頼らなければならない日本社会。先週、家電量販店「ノジマ」が、定年後80歳まで再雇用契約ができるよう就業規則を改めたことが発表され、話題を呼んだ。

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 政府も2013年に高年齢者雇用安定法を改正、定年を65歳までに延長し、定年後の再雇用などを企業に義務づけた。そして今年3月には同法をさらに改正、来年4月以降は70歳まで働く機会を確保することなどを企業の努力義務とした。

 「よほど健康ではないと80までは無理だと思う」「もうやめたげて!って悲鳴を上げてしまった」。そんな声もある中、『ABEMA Prime』では、実際に働いている高齢者を取材した。

■幹部自衛官からフリーのシステムエンジニアに転身

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 フリーランスのシステムエンジニアとして活躍している北海道在住の藤原幸雄さん(68)は、陸上自衛官として働いていた経験を持つ。

 1974年に防衛大学校を卒業後、幹部自衛官として任官。現役時代は若手を厳しく指導する、いわゆる“鬼の教官”だったこともあるという。ただ、一般企業よりも定年が早いのが自衛隊の世界。藤原さんも55歳で定年を迎え退官した。

 就職活動は難航したというが、実は若い頃からIT(情報技術)に興味があったことから、在職中に情報処理技術者試験などの資格を取得していたため、ITのベンチャー企業に再就職することができたという。「自衛隊だったら部下を威嚇するようなこともしたかもしれないが、そんなことは絶対にしないように若い人を“先輩”として立てて、敬語を使って接するようにしたりと、なるべく違和感を覚えないよう、気を遣いながら過ごしていた(笑)」。

 そのITベンチャーを10年勤め上げたのち、65歳で2度目の定年を迎えた藤原さん。その後はエンジニアのエージェントである株式会社PE-BANKに登録、今に至っている。「65歳を超えてエントリーしていただくケースは初めてだったので、正直、面接するかどうかも悩んだ。頑張っても1、2件、案件を紹介できるかな、くらいに考えていたが、4年間、ほとんど途切れなく仕事が入ってきているし、どの現場でも一定の成果を出していただいている。私としてもありがたいというか、助かっている」(中村健夫・PE-BANK北海道支店長)。

 今後について藤原さんは「万が一お客さんに喜んでもらえる品質を保てなくなった場合はボランティアでもいい。元気なうちは自分の持っている技術で社会の役に立つ何かができればいいな」と話していた。

■83歳で夜勤の警備員…「ビールがおいしい、食事がおいしい」

元自衛官のフリーランスエンジニア、78歳で警備員に転身した元経営者…“70歳でも働く社会”が目の前に
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 週3~4日、夜8時~早朝4時までの夜間は警備員として、月に10日、朝9時~夕方4時まで駐輪場管理人として働いている大和忠雄さんは、現在83歳だ。32歳のときに一念発起し脱サラ、40年以上にわたって事務用品の卸売会社を経営していたが、ネット通販普及のあおりを受け廃業。会社を整理した時点での資産はゼロになってしまったという。

 しかし「これから前向きに生きなきゃいけない。目標を持って頑張ろうという気持ちになった」として、1年後には警備員として社会復帰。現在は妻(76歳)と2人暮らしで、賃金の約20万円と年金の約20万円を合わせた40万円に対し、生活費など支出は約35万円。月に5万円の貯蓄もできているという。子ども2人はすでに独立し、孫も5人(中1~社会人)いる。

 「仕事が大好きだ」という大和さん。「家でフラフラしているよも、仕事をしていた方が体調も良い。まだまだ体力には自信があるし、健康にも恵まれている。警備員をしているとボケるわけにいかない(笑)。人助けになるので、生きがい、働いている喜びがある。暑い日に仕事が終わって、“俺は今日もできたんだ、この年でまだ働くことができる”という達成感が何とも言えない。ビールがおいしい、食事がおいしい。家にいた時はこんなにおいしいと思ったことはない」と笑う。

 大和さんに昨今の定年延長の流れについて尋ねてみると、「企業は年齢に関係なく、やっぱり働きたいという意思がある人を採用するようしなければいけないと思う。その意味では、80過ぎても雇ってくれる今の会社は非常にありがたい。こんなにありがたいことはないと思っている」と話していた。

■夏野剛氏「一律に70歳とか言っている制度はおかしい」

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 ドワンゴ社長で、慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「今の日本には解雇規制の問題があって、働く人の権利を守ることが重視されているため、なかなか働いてもらえない人であっても、本人が拒否すれば辞めさせることができない。その点では、大和さんのように自分で判断できる方を雇うことはリスクではない。逆にリスクがあるのは50歳過ぎたら働かなくても定年まではキープしてもらえる、と思っているような40代だ」と指摘する。

 その上で「要は個人の問題なのに、一律に70歳とか言っている制度はおかしい。定年という制度自体、先進国だったら年齢差別禁止法に違反する。働きたい人が働くことができるようになったのが今の働き方改革の成果だと思う。政府が70歳まで云々と言っているのは、企業に雇用対策を押し付けているだけだ。国として、働きたい人が働けないときの失業保険の給付をもうちょっと分厚くするといった制度がいいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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