物腰柔らかい話し方に人懐っこさ、それでいて棋力も高い、将棋界の“好感度の塊”のような高見泰地七段(27)が、将棋の普及の新たなフィールドとしてInstagramに目をつけた。早指し棋戦「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」では久々に和服姿で対局し、最終盤で逆転勝ちを収めたが、その直前に語っていたのはInstagramについて。「新しい場所から将棋好きが増えればなって思うんです」と微笑んでいた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、棋士・女流棋士とファンの交流の場がめっきり減ってしまった将棋界。オンライン指導対局などはあるものの、多くの人が集まる前でトークする大盤解説も、藤井聡太棋聖(18)の出場するタイトル戦ともなれば、満員御礼、立ち見必至になっていたはずだ。イベントでも大活躍する高見七段は「ファンの方々の気持ちも折れないようにと考えるんです」と、日々試行錯誤している。
コロナ禍の将棋界で一気に増えたのがTwitter、YouTubeの利用だ。若手棋士だけでなく、レジェント級の棋士までTwitterに投稿し、YouTubeでは解説動画やトーク動画を公開し始めた。「Twitterはもう過密状態だし、YouTubeは定期的にやらないといけないという制約もあって」と考えた末、まだ将棋界の人々があまり手を出していないInstagramに目をつけた。
利用者層の違いについての期待が大きい。「インスタは圧倒的に女子向けじゃないですか。人の行かない道で、どこまで行けるかやってみたくて(笑)写真撮るのも嫌いじゃないし。一番好きなのはストーリー機能なんですけどね」と、24時間で消える気軽さもあってか、ストーリーはよく使う。
プロの棋士としては、叡王のタイトルを獲得したことで、一つの目標を果たした。同世代が一線級で活躍し、既に自分より下の世代でも勢いのある若手が出始めている。「ここ数年、みんなが経験できないことを経験できたので、それを今後に活かせるかどうか。それを活かせば違う強さも出てくると思う。自分には自分の戦い方があって、それを殺してしまうと、もう勝てなくなってしまうと思うから、自分を見失わないようにしたいと思います」と、将棋そのものについては、近づく30代を前に足元をしっかりと見るようになった。
盤外では将棋界のインフルエンサーとなり、盤に向かった際は上位に名を連ねるべく、今までとは異なる力を模索する。両輪がうまく回り始めれば、勝利を報告するストーリーを待ち望むファンも、今よりもっと増える。
(ABEMA/将棋チャンネルより)