旅行は“不要不急”のものではない…Twitterで窮状を訴えた京都の旅館の3代目社長
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 政府の「Go To トラベル」事業がスタートして3週間。菅官房長官は6日、「4連休を含む足元の予約は比較的堅調であるとの報告を受けている」としているが、中小企業基盤整備機構が先月末、サービス業(宿泊・飲食)を対象に実施した調査によれば、「プラスの効果を感じている」が5.3%だったのに対し、「プラスの効果を感じていない」は75.1%に達している。

・【映像】「旅館こうろ」の3代目・北原達馬社長に聞く

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 実施すること自体の是非も議論を呼んだ。そんな中、「反対の方がたくさんいらっしゃるのは存じていますが、賛成の方もまたいらっしゃいます」「何故いまなのか?という疑問もあるかと思いますが、もう今でないと間に合わないと言う境遇もまたあるのです。観光業にとってはようやく見えた光です」と、Twitterで窮状を訴えたのが、4月半ば~6月後半まで休業を余儀なくされていた「旅館こうろ」(京都市中京区)の3代目・北原達馬社長だ。

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 「3~6月にかけて観光業界の売り上げが90%以上も減ったと言われる中、Go To キャンペーンは業界からの要望でもあった。ただ、これが発表されると、すぐにネットも含めてメディアでは反対の声が多く取り上げられていた。ショックだった。そのような流れができてしまうと、ますます苦しくなってしまう。賛成の意見もあるのだ、と勇気をもって発信しなければならないのかなと考えた」。

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 ツイートに対しては「観光業にとっては死活問題ですよね」「こうでもしないと日本の観光業・経済は破綻に向かってしまう」といった賛同の声が寄せられた一方、「今やらなければ、という観光業界は察しますがこれで各地で感染拡大したらどうなりますか?」「たぶんその光は幻覚ですよ」といった厳しい声も少なくなかったという。

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 1950年に創業、部屋数30室、従業員40人(パート・アルバイトを含む)を抱える「旅館こうろ」の中心的な客層は修学旅行の団体客で、個人客も20~30代の若者が多いという。平均稼働率を見ると0%、売上もほぼゼロの日々が続いている。

 「先日、福井県に向かう途中のキャンプ場に見たことがないくらいの数のテントが立っていたし、京都府でも北部の海辺の地域ではお客様が増えてきているらしい。やはり旅行に行きたいという気持ちは皆さんあるのだと思うが、行くにしても人目をはばかって、というような感じだろう。やはり都市部は避けられていると感じていて、当館を含め京都市内の旅館では予約が増えたという実感はない。7月に入ってもここまで戻らないというのは予想以上だ」。

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 毎月の人件費や借入金の返済は持続化給付金や借入金で賄ってきた。4~6月分の雇用調整助成金の支給はまだだ。借入金についても、延期された修学旅行が7月以降に再開すると説明していたものの、9月に延期した修学旅行の実に3分の2がキャンセルになり、年内には新たな借入金が必要になる見通しだという。

 「修学旅行の団体予約はこの間、ゼロだった。布団の並べ方などを工夫し、感染防止対策を取ったとしても、密の状況を避けるのはかなり難しい。通常の個人の旅行よりもリスクは高いと思う。7月以降は営業を再開しているが、予約はほとんど入っていない。ただ、修学旅行がいつ始まるかわからないので、個人のお客様を取れないという難しさもある。そのためにパート・アルバイトも確保し続けているので、毎月1600万円以上が出ていくという感じだ」。

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 元経産官僚の宇佐美典也氏は「気持ちの問題とGo To トラベルの構造上の問題とがあると思うが、構造の問題は今すぐ手を打たなければならないと思う。まず利用額に比例して補助金の額が決まる制度なので、必然的に高い宿泊施設に泊まろうというインセンティブが働く。そこで中小の旅館が苦しむことになる。また、旅行は数カ月前から予約するものなので、特に感染状況が読めない都市部では制度との噛み合わせは悪い。そうした意味で、むしろ交通費の部分を手当した方が、市場を歪めることはなかった。今すぐ高速道路や新幹線、航空機への補助に切り替えなければならないのではないか」と指摘する。

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 北原社長は「もちろんコロナによる生命の危険もあるが、経済が疲弊し、失業率が上がれば困窮による自殺率が上がってしまう。私のツイートに対していただいたコメントの中ですごく響いたものがある。“旅行というのは不要不急のものではない。生きることそのものだ”というものだ。そうだと思う」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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