将棋の名人戦七番勝負第6局が行われ、渡辺明二冠(36)が豊島将之名人(竜王、30)を下し、シリーズ成績4勝2敗で新名人となった。2000年4月に史上4人目の中学生棋士としてプロデビューを果たしてから20年あまり。順位戦A級への昇級から10年以上かけての初挑戦・初獲得に「縁がないと思っていた」と赤裸々な思いを会見で明かした。また、藤井聡太棋聖(18)を筆頭に、これからさらに激化する世代闘争については「40歳の時にどれだけ持ちこたえられるか」とも述べた。会見の主な質疑応答は以下のとおり。
-名人獲得の心境を
やっぱりちょっとまだ実感はないです。これから何日か経って、時間が出てくる気がしています。
-改めて名人戦の印象は
名人戦はずっと出てみたいタイトル戦でしたが、なかなかチャンスがなくて。近年は縁がないかなと思っていたところもあったので、あと1勝というところまで来ても、あまりイメージがなかったです。
-喜びの思いは
これから新聞とか見たり、明日お祝いの言葉とかかけてもらって、少しずつ実感してくるのかなと思います。
-他のタイトル獲得と名人獲得との違いについて
初出場ということで、他のタイトル戦に比べると、出るのがだいぶ遅くなりました。A級に上がったのが20代半ばだったと思いますが、そこから10年ぐらい出られなかったので、ちょっとダメかなと思っていた部分がある。名人というタイトルを意識する機会は、今までなかったですね。
-今回の相手は年齢が下でもある豊島名人だった
対戦相手の年齢、先輩、後輩は意識してなかったですが、名人戦にあと何回出られるかと考えたら、そんなに多くないだろうと。取れるなら今回なんとかしたいという気持ちはありました。
-新しい勢力も出てきて、タイトル保持者の顔ぶれも変わった。タイトル獲得の意味合いと今後の時代について
この年齢になってくると、次があると考えなくなる。20代は次があると思っていたが、タイトル戦に出られる棋士のキャリアとしては後半戦に来ているので、いつまでやれるかも含めて、チャンスはあとどれくらいあるのかということは、今回も考えました。
-(新型コロナウイルスの影響で)変則日程になり、他のタイトル戦も並行して戦うことになった
日程的にはどうしてもきつい部分があった。ただ、みんな同じ条件でもありますし、タイトル戦で活躍している人はみんな大変な日程でやっている。体調面と研究のバランスは、ちょっと大変だったと思います。なかなかこういった状況でタイトル戦をやるのは、これから先何度もあることでもないと思うので仕方ないです。
-棋聖戦で藤井棋聖に敗れてからの立て直しは
6月に棋聖戦と名人戦、両方始まって、しばらくはその2つが並行して続いていました。2つ終わって一区切りと思っていたので、棋聖戦負けて、それで落ち込むようなことはなかったんですが、すぐに名人戦があったので、棋聖戦からの立て直しという意識はあまりなかったです。2つやって結果が出たところで、この先の目標を考えようという意識でした。6月に再開してからバタバタとやってきたので、棋聖戦が終わっても対局がありましたし、そのあたりの振り返りとかは、これからしたいなと思っています。
-今シリーズの勝因は
先週の将棋も苦しかったんですけど、それもなんとか耐えて勝てたので、今日はいい流れで来られたのかなと。その流れを継続して、今日なんとか勝ちたいなとは思っていました。
-名人になり、順位戦から解放される。来年からの防衛に向けて、どう受けて立つか。
タイトル戦の結果次第で、9月以降の過ごし方もだいぶ変わるだろうと思っていました。開幕が遅かった分、来年がすぐ来てしまうという部分もある。他のタイトル戦が始まると、またバタバタと次が来てしまう。6月からでもタイトル戦が続いてきたので、次のことはしばらく考えたくないというところです。
-今後の世代闘争について
何歳ぐらいまでタイトル戦に出られるかは意識するところだし、年々厳しくなるとは思う。タイトル戦に出る機会がずっと続くというわけではないですから。目の前の対局と目の前の相手に向かっていくだけで精いっぱい。40歳になった時に、どれくらい持ちこたえられるか。長期的なことも考えながら取り組んではいます。
-対局前と対局後の心境の変化は
(あと1勝となった)先週からはあまり時間がなかったので、その間が長ければ余計なことを考えたと思うんですが、時間がなかったので余計なことを考えなくてよかった。ただ、普段どおりに決断できなかったり、一手一手の重みは感じました。そのあたり力みみたいなものは、やっぱりあったと思います。
(ABEMA/将棋チャンネルより)