8月14日に世界で同時配信された総合格闘技「ONE Championship」の大会「ONE: NO SURRENDER II」に、タイ在住の日本人・藤沢彰博(40)が出場。ポンシリ・ミートサティート(タイ)と対戦し、左フックで1ラウンドKO勝ち。3連敗中と“崖っぷち”状態からの復活を見事なKOで飾ると、劣勢予想をしていたファンから「これはゴメンなさいだ」「まさかのスタンドKO」など、驚きと称賛の声が上がった。
26歳から総合格闘技をスタートさせた藤沢は、それまでアパレル店員だったという異色の経歴の持ち主。2016年にタイに拠点を移し、「ONE Championship」の人材発掘リアリティー・ショーでの戦いぶりが認められ、超遅咲きの38歳で契約。まさに異例づくしといえるキャリアを歩んできたが、ここ最近は3連敗中。試合からも1年半以上遠ざかっており、年齢を考えても崖っぷちの状態だった。
対戦相手のポンシリも3連敗中と後がない状況だが、その相手が内藤のび太などタイトル戦線の上位ランカーだったこともあり、下馬評は圧倒的にミートサティートが有利だ。
序盤はムエタイがベースのポンシリが積極的にミドルやハイを放ち、藤沢が冷静にかわす展開。その後も、至近距離での打ち合いや、離れ際での強烈なヒジなど迫力のあるポンシリの攻撃が続く。蹴りに絶対的な自信があるポンシリに対し、藤沢はカーフへの蹴りを繰り出すと素早く潜るように片足をとってテイクダウンに成功。下になったポンシリも強いヒジやパンチで抵抗するが、藤沢がポジションを変えて中腰からパウンドを打ち下ろした。
ポンシリの下からの打撃を貰いながらもこの日の藤沢は冷静だった。一度は首を固めに狙うが、嫌って前を向くとマウント。さらにハーフからサイドボジションで密着しながら、ヒジとパンチを連打。たまらず立ち上がったポンシリだが、フロントチョークなど藤沢の攻撃は途切れない。
そして、フィニッシュは突然訪れた。1ラウンド終了30秒前、両者が離れてスタンドでの攻防になると、ポンシリの軽いミドルをガードした藤沢がひと呼吸おいてカウンターぎみに強烈な左フックを撃ち抜いた。まともに食ったポンシリがダウンすると、畳み込むようにヒジ、ヒザを叩き込む。それでも立ち上がった相手に、藤沢がダメ押しとなる左フックをアゴにねじ込んだ。膝から崩れ落ち、大の字になって倒れたポンシリは天井を仰ぐようにゴングを聞いた。
両者連敗中ということもあり“アップセット”という表現は相応しくないかもしれないが、藤沢の劣勢を予想した人は多かった。ABEMAで解説を務めた若松佑弥も「勝ったから言いますけど…(藤沢選手が)テイクダウンを切られて殴られ続けると正直思った」と、特に打撃戦ではポンシリに分があると予想していたようで、「殴られ続ける」の辛口ワードに解説陣も思わず苦笑。
視聴者からも「予想を裏切られた、すごい…」「これはゴメンなさいだ」「まさかのスタンドでKO」など、驚きのコメントが寄せられた。一方、劇的な復活を果たした藤沢に対して「年齢なんてただの数字」「おじさん大勝利!」「おっさんおめでとう」と藤沢の1年8カ月ぶりの勝利を称える声も多数上がっていた。