見事な左カウンターを一閃し、衝撃的なKO劇を演じて見せたファイターが試合後に見せた喜びの舞が、「謎ダンス」としてKOシーン以上に話題を集めている。
無観客のリングに響いた「バチン」という乾いた音。ムエタイ仕込みの鋭い左カウンターが炸裂すると、相手はふらつきながら後退を開始。決定機を逃さずさらにパンチを畳みかけると、相手は大の字になりマットに沈んだ。見事なカウンターへの衝撃と興奮が冷めやらない中、勝者は拳を突き上げてコーナーに駆け上がり、その後、敗者のもとへ。互いに健闘を称え合った後、リング中央で問題のシーンは起こった。
会場に流れる音楽に合わせ、軽快なリズムで披露された喜びの舞が独特すぎたことで、KOシーン以上に「謎ダンス」としてネット上で話題になっている。
8月14日に世界同時配信された「ONE Championship」の『ONE: NO SURRENDER II』で、タイの名門ジムに所属する選手同士の一戦が総合格闘技ルールで行われ、ヨッカイカー・フェアテックス(タイ)がジョン・シンク(英国)をパンチの連打でKOした。
ヨッカイカーはフェアテックス・ジムに所属し、一方のシンクはタイガー・ムエタイといずれもタイの名門ジム所属。立ち技ムエタイから総合格闘技への転身組という共通点のある両者の対戦だ。昨今、タイもMMA新興国として力をつけはじめているだけに、今後の勢力図を占うような一戦といえる。
1ラウンド序盤、首相撲からテイクダウンでシンクが上を取る。その後もスラムぎみの投げ、フロントチョークを狙うなど、MMAへの適応力を示し引き出しの多さを披露する。このままシンクがペースを握るかに思われたが、ヨッカイカーが左右の打撃を起点に、一発が重い左ストレートの連打でペースを握り始める。後半は両者がパンチとローを飛ばす激しい打撃戦となった。
2ラウンド、シンクがテイクダウンから移行してフロントチョークを狙うが、これをヨッカイカーが腰の強さで跳ね返す。その後、スタンドに移行。シンクが左右の連打から右を伸ばした次の瞬間、無観客の会場に“バチン”という乾いた音が響いた。ヨッカイカーの強烈な左カウンターが炸裂だ。
一瞬動きが止まったシンクが後退を開始するも、コーナーまで追い詰めながら右フック、アッパー、左ストレートと畳みかけると、追い打ちをもらったシンクはリングに大の字に倒れた。
この試合をABEMAでゲスト解説していた若松佑弥が指摘したのが、シンクのテイクダウンを再三切って回避することができるヨッカイカーのスクランブル能力の高さだ。「倒される怖さが無くなったことで、ストライカーが躊躇なく打撃を振るうことができる」とした若松のコメントを象徴するかのような劇的な幕切れだった。
ヨッカイカーが見せた鮮烈なカウンターからのKO劇に視聴者からは「破壊的なノックアウトだ」「一瞬MMAの試合だったことを忘れるようなKO」など驚きと称賛の声が上がったが、それ以上に多かったのは、ヨッカイカーが披露した喜びの舞に対する「謎ダンス」の声。中には「お笑い芸人か」といったツッコミまで見られていた。