将棋の最年少棋士・藤井聡太棋聖(18)が、8月19、20日に福岡県福岡市「大濠公園能楽堂」で行われた王位戦七番勝負第4局で木村一基王位(47)に勝利、シリーズ成績4勝0敗のストレートでタイトル奪取に成功した。藤井棋聖はこれで10代としては初となる二冠を達成。「タイトル2期」で規定より最年少での八段昇段を決めた。2016年10月、最年少でのプロデビューを果たしてから4年足らずながら、将棋史にまたも新たな大記録を残した。
人が踏み込めない領域にたどり着き、新たな快挙を達成した。形勢互角で迎えた1日目の封じ手。藤井棋聖が選んだのはAIが最善手として挙げていたものの、指すには発想も度胸も人外でなければ無理といったような手。関係者からも、候補手とは言われたが実際には指せないだろうというのが大方の予想だった。それでも藤井棋聖は大英断で、この一手を選択。二冠に向けて力強く踏み込む「8七同飛成」は、本局の中でも特に印象的な場面となった。
対局後、取材に応じた藤井棋聖は、注目された封じ手の局面について「飛車が働かなくなってしまうので、同飛車で勝負しようと思っていました」と語ると、シリーズを通じては「自分にとっても初めての2日制で、得るものがあったのかなと思います。内容的には押されている将棋が多かったと思うので、4連勝という結果は実力以上の結果が出たと思います」と振り返った。
この一手を契機に、徐々にリードを築き出した藤井棋聖は、難解な中盤・終盤でも攻撃的な姿勢に終始。その粘り強さは将棋界でも1、2を争う木村王位に逆転の機会を許さず振り切ると、4連勝というこれ以上ない成績で快挙を達成した。
今回、藤井棋聖が達成した記録は2つ。最年少での二冠達成は、羽生善治九段(49)が持っていた21歳11カ月で28年ぶりの更新、10代では初の快挙。また八段昇段は、加藤一二三九段(80)が持っていた18歳3カ月で、これを62年ぶりに更新した。加藤九段は順位戦A級昇級でのものだったが、「タイトル2期」での八段昇段は2018年6月に追加されたものだった。
藤井“新二冠”だが、今年度中にまだタイトルを増やす可能性もある。例年9月に始まる王将戦の挑戦者決定リーグには、シードで参加が決定している。昨期はあと1勝のところで挑戦を逃したが、今期こそ挑戦権獲得を狙う。待ち構えるのは棋聖戦でぶつかり、その後に名人位を獲得した渡辺明王将(名人、棋王、36)だ。残り6つのうち、名人戦を除けば勝ち進みさえすれば挑戦権が獲得できる。史上初の10代二冠という快記録は、自身の手によって三冠、四冠とどこまで塗り替えられるか。
(ABEMA/将棋チャンネルより)