「今の方が充実しているし、最高です」。女優・水川あさみの活きが抜群にいい。気鋭の脚本家・足立紳による監督作『喜劇 愛妻物語』(9月11日公開)で、セックスのことばかりが頭にある売れない脚本家の夫にイラつき、罵詈雑言をマシンガンのように連射するチカを演じている。
 「クズッ!」「タン壺ッ!」「泥棒ッ!」。スクリーンを見つめる誰もが驚くはず。“新境地開拓”という言葉が陳腐に聞こえるほど、いまだかつてない水川の姿がそこにはある。怒りの感情の中に悲壮を同居させながら、愛情とユーモアも忍ばせる深みのある演技。泣いて笑って怒って喜んで。タイトルに偽りなしの“喜劇”をものの見事に体現している。