競輪、オートレースを運営する公益財団法人JKAの公式YouTubeチャンネルが8月の中旬に新シリーズの動画を公開しました。その名も「打鐘<ジャン>」。
【動画】連日、レースを生中継 ABEMAの競輪・オートレースチャンネル
「『ジャンをもっと近くで見てみたい』『あの鐘の音色をもっと聞いていたい』といった競輪ファンの熱い要望にお応えしました! レースを作るのは人間だけではありません。競走を白熱化させる重要な役割を持つ打鐘に今一度注目してみてはいかがでしょうか?」とのこと。
1分くらいの動画で、いろんな角度での打鐘画像から始まり、レース同様に鳴らして終わるだけという、かなりシュールでマニアックなものになっています(笑)。
この原稿を書いている8月27日現在、「#1 豊橋競輪場」「#2 高知競輪場」「#3 久留米競輪場」の3つがアップされているのですが、高知だけ鐘(?)の形状が違っていることを疑問に思うかもしれません。
そこで今回は「ジャン」とも呼ばれる打鐘(だしょう)についてお話しましょう。
打鐘とはレースの残り1周半から残り1周までの間に打ち鳴らされる鐘のことです。打鐘が鳴り響く辺りから選手は本格的に動き出し、抜きつ抜かれつの攻防が繰り広げられます。前述した「競走を白熱化させる重要な役割を持つ」というのは、そういうことです。
打鐘を叩いているのは打鐘員と呼ばれる周回通告員のひとり(周回通告員は他に周回告知板で周回数を表示して通告する周回員という人がいます)。打鐘員は「先頭の選手が最終周回前回のバック・ストレッチ・ラインに到達したときから、先頭の選手が最終回始めのホーム・ストレッチ・ラインに到達するまでの間、打鐘により周回数が残り1周であることを通告する」という業務が与えられています。
なお、自転車競走競技規則の第73条3項によると、競走中に周回通告員が打鐘もしくは周回通告を誤って行ったとき、または打鐘もしくは通告を行わなかったとき、競走は不成立になってしまうため、非常に責任重大な業務を担っているのです。
この業務と規則は1948年11月20日に小倉競輪場で第1回競輪競走が行われたときからあるものなので、打鐘は競輪の歴史と共にあります。
鐘を打つと書いて打鐘ですから叩くのは鐘なのですが、形状は全場で統一されているわけではありません。最も多いのはお寺にある鐘のような半鐘型で、次に多いのがベル型。それとは別に高知競輪場のみ、銅鑼が使われています。各競輪場の打鐘の形状は以下。
<北日本>
函館競輪場=半鐘型、青森競輪場=半鐘型、いわき平競輪場=半鐘型
<関東>
弥彦競輪場=半鐘型(※1)、前橋競輪場=半鐘型、取手競輪場=半鐘型、宇都宮競輪場=半鐘型、大宮競輪場=半鐘型、西武園競輪場=半鐘型、京王閣競輪場=半鐘型、立川競輪場=半鐘型
<南関東>
松戸競輪場=ベル型、千葉競輪場=ベル型、川崎競輪場=半鐘型、平塚競輪場=半鐘型、小田原競輪場=半鐘型、伊東競輪場=半鐘型、静岡競輪場=半鐘型(※2)
<中部>
名古屋競輪場=半鐘型、岐阜競輪場=半鐘型、大垣競輪場=半鐘型、豊橋競輪場=半鐘型、富山競輪場=半鐘型、松阪競輪場=半鐘型、四日市競輪場=半鐘型
<近畿>
福井競輪場=半鐘型、奈良競輪場=ベル型、向日町競輪場=ベル型、和歌山競輪場=ベル型、岸和田競輪場=ベル型
<中国>
玉野競輪場=半鐘型、広島競輪場=半鐘型、防府競輪場=半鐘型
<四国>
高松競輪場=半鐘型、小松島競輪場=半鐘型、高知競輪場=銅鑼、松山競輪場=ベル型
<九州>
小倉競輪場=半鐘型、久留米競輪場=半鐘型、武雄競輪場=半鐘型、佐世保競輪場=半鐘型、別府競輪場=半鐘型、熊本競輪場=半鐘型
※1、2=形状は半鐘型だが材質は銅ではなく、ベルに近い
大半は半鐘型ですが、近畿はベルが主流ということがわかります。同じ半鐘型でも大きさや形状が細かく異なっているので、音色は変わります。是非聞き比べてみてください。
ちなみに小倉競輪のイメージキャラクター「かねりん」は打鐘をモチーフに作られています。キャッチフレーズは「打鐘の妖精」。妖精というよりはぽっちゃりして可愛らしいキャラクターなのですが、よく見るとお腹周りに9色のライン。競輪の1番車から9番車までの9色で、これは小倉競輪場の鐘にも施されています。こちらも是非チェックしてみてくださいね。