生徒の写真が無断でネット上に…新型コロナ中傷、若新雄純氏が考える“ムラ”の自警意識
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 文部科学省は8月25日、新型コロナウイルス感染による差別・偏見の防止に向け、萩生田文部科学大臣からの声明を発表。児童生徒や学生、学校関係者、保護者や地域住民などに対し、新型コロナウイルス感染者への差別をしないよう呼びかけている。

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 文部科学大臣が声明を出す異例の事態。過去、島根・立正大学淞南高等学校で新型コロナウイルスのクラスター感染が発覚した際には、生徒の写真が無断でネット上(ブログやSNS)に掲載された。サイトでは、生徒や学校への誹謗中傷のコメントが確認されている。

 島根県は「被害者が未成年で重大な人権侵害の恐れがある」として、21日松江地方法務局に計13件のサイトを通報(全国初)。島根県の通報に対し、法務局は投稿が人権侵害にあたるか調査した上で、サイト管理者への削除要請などを行うとしている。

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 この事態にニュース番組「ABEMAヒルズ」のコメンテーターで、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、新型コロナウイルス感染者への差別・中傷について「間違った正義の名の下の暴走」と警鐘を鳴らす。

「日本では、たとえ殺人犯だったとしても、ちゃんとした捜査機関が丁寧に捜査して、人権に配慮されている。場合によっては社会復帰のチャンスもある。人の罪やその罰を扱うときは、すごく慎重にならないといけない。民間人が自分の正義感で勝手に『この人は悪い奴です』と拡散するのは、どんな場合でも許されないと思う。冤罪や間違いを100%防げるわけじゃないし、勝手に相手の個人情報を晒す行為は許される余地がない。『国や警察が裁かないなら私たちが裁く』と言って、人を傷つけるのは、正義の名の下の暴走だ」

 さらに、若新氏は萩生田文部科学大臣の声明について「もっと早く、もっと強く言うべきだった」と指摘。

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「今はインターネットで情報が広く拡散されて、関係ない人を深く傷つける可能性もある。むしろ、捜査権を持たない民間人が人の罪を裁こうとすること自体、罪なこと。逆にこれを許さない条例や法律を作った方がいいくらいではないか。国が作らなくても、自治体ごとに条例を作って、社会的に問題があるときは法治国家として法で対応する。民間人が勝手に人の罪を問題化させない社会を作るべき」

 特に都心から離れた地方の町では、自警意識が強い。自身も福井県出身の若新氏は「ムラ」の自警意識についてこう述べる。

「社会がここまで近代化する前は、田舎の村で野菜泥棒があっても、警察もちゃんと動いてくれなかったし、犯人もなかなかわからなかった。だから、自分たちの土地や作ってきた農作物を守るために、自警的に見張り合ってきたという経緯がある。お互いに監視しあって、怪しいものはみんなの前で晒して排除する。もちろん冤罪も多かったけれど、それ以上に、土地や作物を守りたい気持ちが強かった。今でもそういう意識はまだ残っている」

 その上で「自分たちの土地を守りたい気持ちはわかるが、それによって人を傷つけることはあってはならない」と主張した若新氏。相互監視、自警意識が強い土地柄であっても、人権を守る重要性を語った。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】コロナ差別 間違った正義防ぐには
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