新型コロナウイルスの影響で活動が制限されている全国の大学の映画サークルなどが協力して撮影した映画が、1日からインターネットで公開されている。『ABEMAヒルズ』では、映画制作の発起人となった学生を取材。「希望」をテーマに作られた映画への思いに迫った。
全てリモートで撮影された176本の作品が、1本につなぎ合わさった映画『突然失礼致します!』。全国の大学およそ100校の映画サークルなどがそれぞれ撮影した1分ほどの動画を一つにまとめたオムニバス映画だ。
「みんな共通して『撮りたい』という思いが強かったです。だからこそ、一見すると無茶苦茶な提案ながらも100大学・120団体というこれだけ多くの人が集まった」
こう制作を呼びかけたのは、映画の総監督を務める群馬大学4年で映画部部長の熊谷宏彰さん。コロナの影響で全国の大学が休校となった4月、すぐにこの映画の制作を思いついたという。
「4月になって、全国的に大学の入学式すらないというか何もできない中、他の(映画)サークルは何をやっているんだろうと気になっていた」
熊谷さんがSNSを通じ各大学の映画部に参加を呼びかけると、全国からおよそ120の団体が集まり、5月上旬に本格的な活動をスタートさせた。しかし、異例の映画制作…一筋縄ではいかなかったという。
「映画というのは、それこそ監督から撮影、制作進行、美術といった感じで共同で作られるものなので。1人で撮影から主演まで全部やっている人もいて、少し大変そうだなとは感じた」
「沈んでいる日本を明るくしたい」。それぞれの思いが詰まった作品は、およそ3カ月の制作期間を経て190分の一つの物語となった。
「感謝とともに“やったな”という達成感ですね。この先もこの180通りの希望をいかに伝播していくか。それこそコロナ以上の速度で伝播させていく必要があると思っていて、まだ進んでいかなきゃなという思いはありました」
現在、劇場での公開を目指し、クラウドファンディングで資金を募っている。
「映画たるもの劇場で流さねばならないと感じているんです。先月の暮れに目標金額の100%を達成させていただいて、実際にほぼ流れることが確定となったので本当にこの先が楽しみです。この作品は総キャスト数が500人くらいいるんです。この500人の学生たちの『撮りたい』という思い、有り余るエネルギーがある意味一つ凝縮された形で一本になったので、これが観られていくっていうこの先に期待したいですね」
コロナ禍で生まれた新しい映画作り。作家でエッセイストの岸田奈美氏は「大学が休校になったり、就活の面接がオンラインになったりして不安になっている中で、皆が乗っかれる、今しかできない取り組みによって思い出が残ったのはすごくいいことだと思う」とコメント。
さらに、「1分の短編でどう見せるのかというのと、それが3時間10分あるのは今までなかったことだと思う。変化を恐れずに、映画みたいに伝統とか研究されている常識を一旦手放して、皆が楽しい・幸せになれるような形でヘルプを発信できる人たちは、この変化の時代で生き残っていけるのではないかと思う」との見方を示す。
また、岸田氏もコロナ禍で新しい発見、変化があったといい、「作家・エッセイストは原稿を完璧な状態にして本やウェブに出すのが当たり前だったが、皆がパソコンを使ってオンラインでいろいろ見るのに慣れてきているので、生の原稿を書いているところを配信したり、校正や編集しているところをGoogleドライブなどのクラウドに映し出したり、リアルタイムで舞台裏を見せるとすごく盛り上がった。書く内容も、ソーシャルディスタンスとか誤解がないように文章を追加しないといけなくなって、何を入れて何を省くかを考えるようになった。でもこれはやってみないとわからなくて、失敗して成功して、良かったものだけを残すということを自分でやっていかないといけない」と語った。
新しい取り組みには批判がつきものだが、「『完璧なものを出すのが作家だから、そうじゃない奴は作家じゃない』と言われたりしたが、大事にすべき部分は大事にしつつ、変えてもいいことは失敗を恐れずに変えていく。それができたらこの時代に強く、楽しく生きられると思う。この先、私たちが予想していないような方法や演出がどんどん出てくると思う。ただそれはやってみないとわからないので、やる側は失敗を恐れずに、見る側もフィードバックを当たり前にできたらいいと思う。良し悪しを皆で考えることができれば、作品を作るエンタメ業界は変化に対応できるのではないか」と訴えた。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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